日本弁理士会の活動

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令和7年度パテントコンテスト

選考委員長特別賞、特許庁長官賞、受賞者インタビュー

東京農工大学

令和7年度のデザインパテントコンテストは、全国の高校、高等専門学校及び大学から605件の応募があり、そのうち30件が優秀賞(特許出願支援対象)に選ばれました。

その中から6件が特別賞に選ばれ、「消火剤」は選考委員長特別賞・特許庁長官賞のダブル受賞となりました。

発明者の東京農工大学・大塚修平さん、柳下未禮さん、小川翔也さんにお話を伺いました。

 


 

ー3人は現在東京農工大学の2年生です。パテントコンテストに応募された経緯を教えてください。

大塚:僕と柳下は高校の同級生で、僕と小川は現在同じ学部に在学中です。高校時代から学校に貼ってあるポスターなどでコンテストのことを知っていましたが、大学に入学してから応募してみようと思い立ちました。パテントコンテストで受賞することが入学後の一つの目標にもなっていました。

柳下:僕も高校時代からコンテストの存在は知っていたけれど、自分が応募するとは思っていなかったです。大塚に声をかけられて初めて意識しました。

小川:僕は2人に声をかけられてからコンテストの存在を知りました。そんなのあるんだ、って。

 

ー今回発明された消火剤について教えてください

大塚:わかりやすいように染色したのですが、赤いものがアルギン酸、透明なものが塩化カルシウムです。それぞれの物質に性質があり、 2つを混ぜると瞬時にゲル化します。これを消火剤に応用することを思いつきました。消防ホースでこの2つの物質を放出すると、放出の際は液体で出せるが、ゲル化しそこに留まって火元を覆ってくれる。留まってくれるので、流れていってしまう水よりも再燃のリスクが下がるし、放出する量も少なくて済む。物質の両方のいいところを生かせると考えました。

 

 

ーなぜ消火剤を発明しようと思ったのでしょうか

大塚:アルギン酸の性質に興味を持って、高校ではアルギン酸の研究をしていました。使い道がないかと探していたときに、ニュースでカリフォルニアの大規模森林火災のニュースを目にしました。消火にアルギン酸が使えるんじゃないかと思って考え始めたものです。

 

 

ー研究は授業などで進められたのですか

東京農工大学にはテックガレージというアクティブラーニングスペースが用意されています。そこでは学生がやりたいプロジェクトに予算を助成してくれる取り組みをやっていて、応募して採択され、一年かけて研究させていただきました。

 

ー今回は3人での発明です。消火剤の構想は大塚さんですが、他のお2人はどのような担当だったのでしょうか。

小川:実験は3人でやることが多かったのですが、自分はテックガレージからいただいた予算管理などをやっていました。消火剤として実用化できるかを考えた時に、消火のときの放出には大量のアルギン酸・塩化カルシウムが必要になります。実用化ファーストでかなりコストはシビアに見ていました。

柳下:僕は実験で得られたデータを処理したり、図表を作ったり、あとは特許に出願するための資料の一部をやっていました。

 

ー「ここは大変だった」というポイントがあれば教えてください。

柳下:浸透性を検証するための実験を行ったのですが、浸透した後の液体の重さを測ろうとしたとき、普通の家にあるような測定機械ではうまく測れなかったんです。物質を着色しているので、その色に染まった面積で浸透性を間接的に評価しようと考え、染まった部分の面積を計算するアプリケーションを自作したのが一番大変でした。

大塚:このアプリのおかげで本当に助かりました。柳下はなんでも調べて楽しんでやるタイプで、コンテストのために提出する書類も、柳下が出してくれたデータがあったおかげで裏付けと説得力が増しました。

小川:ベンチュリ管の試作もやってくれたよね。

柳下:3Dプリンターでベンチュリ管の模型を作って、実際に消火剤を放出する仕組みをイメージしたりしましたね。

 

ー受賞の知らせを聞いたときはいかがでしたか。

大塚:正直なところ、優秀賞までは入るかなと思っていました。受賞が分かったときは嬉しいというより「残ってよかった」という安堵の気持ちが強かったです。

小川:僕は賞をとっただけでもすごいと思ったのに、ダブル受賞って…と、最初から最後まで、ずっとびっくりしてました(笑)。

 

 

ー消火剤をどんな方に使っていただきたいですか。

大塚:森林火災以外は他の消火剤や水でいい場面がほとんどなので、この特性を最大限活かせるのは森林火災です。実用化して、少しでも森林火災の早期沈下につながったら本当に理想です。

柳下:消火剤としての性質を示すことができたので、これからは実際の消火設備への組み込みや、輸送の実現性などを詰めていきたいなと思っています。

小川:今、消防士の方にお話を持っていっていて、実際に消火活動をされている方からの評価を聞いているところです。消防庁がやっているコンテストにも応募しようかと考えています。

 

ー今後の目標や、やってみたいことがあれば教えてください。

大塚:自分が思いついたアイディアを評価してもらって、社会に実用化させていくのが好きで楽しいので、今後勉強し、知識をつけていきながら、実用化できる新しいものを作っていける研究者になりたいと思っています。

小川:まずは…大学院に行けるように頑張って勉強します!

柳下:自分はあまり実用化や社会実装に興味を持っていないのですが、やっぱり基礎研究が大事だと思っていて、基礎研究をメインにしていきたいです。ただ、まだ何をやるか迷っているところなので、どういう分野を目指そうか考えながら、バランスよく勉強していきたいなと思います。

 

 

ー貴重なお話をありがとうございました。ご受賞おめでとうございます!