日本弁理士会の活動
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令和3年度デザインパテント
コンテスト
日本弁理士会会長賞 受賞者インタビュー
大同大学
令和3年度のデザインパテントコンテスト(以下、デザインパテコン)の日本弁理士会会長賞は、大同大学情報学部3年(応募時)の遠山千聖さんが「卵黄と卵白を分けるスプーン」で受賞した。
受賞した作品は、プロダクトデザインを専攻する遠山さんが実習授業で製作したものだ。指導教授にこの作品でデザインパテコンに応募することを勧められたという。「自分ではいいと思っていましたけど、コンテストに出して評価してもらえるか、自信はありませんでした」と遠山さんは応募時の心境を語る。
遠山さんは「オリジナリティを前面に出す課題が苦手」だったそうだ。木製スプーンという課題に対し、スプーンに新しい付加価値をつけたいと考えたが、「スプーンは形状がさまざまで可能性も広く、新しい価値として何を付与するか決めるのが難しかった」と振り返る。既存のスプーンをリサーチしていた時に思い浮かんだのは、子供の頃から馴染みがあったラーメンチェーン店スガキヤのラーメンフォークだったという。これはラーメンとスープを一緒に口に運ぶことができる、箸とレンゲの役割を一体化させたものだ。
新しい機能を付与したスプーンの案の中には、マグカップの縁にひっかけられて、かつ飲む時に邪魔にならないスプーンもあった。そうした10点ほどの案の中から、最終的に卵黄と卵白を分けるスプーンに絞った。ネギトロ丼を作る時に上にのせる卵黄を卵の殻で分けようとしてうまくいかなかった経験も、その発想の背景にはあったようだ。市販されている卵黄と卵白を分ける調理器具は、いずれもこの用途だけで使う器具で、特殊な構造で洗いにくく、収納も他の調理器具とは別のスペースを要する。スプーンで卵黄と卵白を分けられれば、洗浄も収納もしやすいし、スプーンとして混ぜることもできると考え、デザインに取り組んだ。
デザインではオリジナリティの出る線として曲線を意識して、卵黄と卵白を分けるスプーンの皿の部分を螺旋状にした。先端に向かってふくらみのある柄は、垂直方向にもカーブをつけている。機能の面では、卵黄が皿に残り、卵白がしっかり下に落ちるように、螺旋の隙間をどのくらいにすればよいか、既存の器具などを参考に設計した。
実際に作る上で難しかったのは、複雑な形を3DCADで設計することだった。うまくいかなくてやり直したり、モデリングするのにかなり時間を要したそうだ。木で製作するので、強度も確認した。切削機で作品ができて、卵黄と卵白を分けられるか試してうまくいった時は「うれしかった」。卵黄の重みで螺旋部分がたわんで隙間が微妙に開き、卵白が落ちやすくなるのは、木製であることの利点のようだ。
応募書類を作成する際には、六面図で「スプーンの正面はどこだろう」と考えたそうだ。六面図の作成は、3DCADの設計図とは別の難しさがあったという。また応募するために知財の勉強もして知識が深まった。「世に出回っている製品すべてが、デザイナーによって考えられた、意味のあるデザインだということを考えるきっかけにもなりました」と遠山さんはいう。
日本弁理士会会長賞の受賞は思いがけないもので、「初めてコンテストに応募して、作品を外部の人に見てもらい、評価されたことで自信がつきました」という遠山さんは、この経験を活かして身の回りの製品をデザインする道に進みたいそうだ。さらに遠山さんはデザインが社会に貢献できることも考えた。
「SDGsの課題も、ひとりひとりのデザイン、アイデアで解決できることがいろいろあると思います。私のスプーンも、間伐材とか活用して製品化されればうれしいです。デザインパテコンに関心を持つ学生が増えて、自分たちのアイデアで社会の課題を解決できると考えるようになるといいと思います」