日本弁理士会の活動

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先生のための(知財の)ひきだし!家庭編

大人でも思わず引き込まれるおもしろ知財エピソード集です。 小学生から高校生までを対象に幅広くご利用ください。

テーマ:システムキッチン

Keywords 一意匠、ビルトイン機器、キッチンの高さ, 収納
法域 意匠法
教科 家庭科

◎システムキッチンとは、日本特有の台所(キッチン)の形態の一種です。 共通な色・寸法の各種ユニット(収納具、調理・洗浄設備、作業台など)をパーツとして組み合わせ、一枚板の天板(ワークトップ)をのせ、全てが一体となるように組み合わせた台所のことです。 スペースの有効利用、デザイン性、用途に合わせた機能的な収納などが、主なメリットとされています。

◎キッチンの高さ選びは大切です。 身体に合わない高さは、疲労の原因にもなります。 自分に合った高さを知る必要がありますが、最適なキッチンの高さは、身長÷2+50cm程度とされています。 例えば、身長160cmの人だと、160cm÷2+5cm=85cmになります。

◎収納はキッチン全体の使いやすさにも通じます。 料理で使う道具をしまう収納ですから、取り出しやすさと収納量は、キッチンの使いやすさと密接な関係にあります。「使う場所の近くに取り出しやすく」を基本に、しまいたいものに合わせてキャビネットを選びましょう。

 ちなみに、システムキッチンやティーセットのように、一連の製品で統一した新しいデザインを考えた場合は、意匠法の「組物の意匠」制度に登録すれば、多物品のセットでも1つのデザインとして保護をうけることができます。また、逆に特徴的なデザイン部分だけをとりだして保護をうける「部分意匠」制度、特殊な機能を保護する「特許法」で保護される場合もあります。

※組物の意匠の登録例:一組の台所セット(意匠登録第1300243号)、一組の紅茶セット(意匠登録第1208452号)
※部分意匠の登録例:ボールペン付きシャープペンシル(のクリップ部分)(意匠登録第1485589号)

(履歴情報)2015/03/24 掲載

テーマ:レシピは特許になりますか?

Keywords 特許、レシピ、料理
法域 特許法
教科 家庭科

 普段皆さんが召し上がっている料理の中には、様々な創意工夫のもと完成されたレシピで作られているものもあるでしょう。また、そのようなレシピを公開しているWEBサイトも多くあります。では、レシピの特許を取って、他人に勝手に真似されないようにすることはできるのでしょうか?

 一見、技術的アイデアを保護する特許とレシピとは無関係のように思えますが、実はレシピも新規性や進歩性といった一定の要件を満たせば、特許を受けることができます。
例えば、レシピの特許の登録例には、次のようなものがあります。
・鶏肉の調理方法(特許第4648368号)
・一口サイズのハンバーガー(特許第4804418号)
・焼きおにぎり(特許2967347号)

 なお、特許になったレシピを使ってレストラン等の商売をする
と特許の侵害となる可能性がありますが、個人的に作ったり、
家庭内で作る場合には、特許の侵害とならず、特許権者の
許諾は必要ありませんのでご安心下さい。

(履歴情報)2015/03/31 掲載

テーマ:粘り強さが納豆を繋ぐ

Keywords 納豆、納豆菌、DC-15菌、αグルコシターゼ阻害、血糖値
法域 特許法
教科 家庭科

 「絶え間なく、粘り強く努力する。これこそ何よりも重要な資質であり、成功の要といえる。」これは、偉大なる発明家トーマス・エジソンの言葉です。粘り強く・・粘り・・ねばねば・・こんな言葉から連想される日本の伝統食があります。そう「納豆」です。

 納豆の歴史は古く、国内では平安時代にも食していた記録があるほどです。現在は、日本各地に約600の製造事業所があり、日本全国で販売される有名ブランド製品から地元密着型の製品等、広く国民に愛され続けています。しかし、近年は食生活の欧米化等の影響もあり、納豆の消費量は年々少なくなっているのも事実です。

 そこで、近年では納豆の匂いや味の改善は勿論、より優れた付加価値を付ける試みがなされています。例えば、DC-15菌という納豆菌を使用した納豆が開発されています。元々、納豆は健康によい食品として認知されていますが、このDC-15菌を使用した納豆は、DC-15菌が食後の血糖値の上昇を特に抑制できるため、糖尿病(予備軍含む)の方にも好適な食品とされています。デンプン等がブドウ糖まで消化・分解され、吸収されることで、血糖値は上昇します。DC-15菌は、この分解過程で働く酵素であるαグルコシターゼを阻害する力があるため、ブドウ糖までの分解を抑制し、結果として血糖値の上昇を抑制できるとされています。DC-15菌を使用した納豆は、平成22年に特許が取得され(特許第4465337号)、この特許技術を利用した製品が複数販売されています。

 このように、納豆は絶え間なく粘り強く開発・改良を重ねることで、これからもより美味しく、健康的になり、広く消費者に受け入れられていくことでしょう。

(履歴情報)2017/03/31 掲載

テーマ:うま味の発見と特許の取得

Keywords うま味、食品
法域 特許法
教科 家庭科、理科

 皆さんは「うま味」をご存じですか?

 「うま味」とは、酸味・甘味・塩味・苦味と共に5つある基本味の一つで、昆布などに含まれるグルタミン酸や、カツオ節などに含まれるイノシン酸、干し椎茸などに含まれるグアニル酸などのことです。人類は古くから、だしをとって「うま味」成分を料理に利用してきました。

 さてこの「うま味」、実は19世紀になるまで発見されていませんでした。それを発見したのが日本十大発明家にも選出されている池田 菊苗博士です。
 1908年にだし昆布から「うま味」成分であるグルタミン酸を発見した池田 菊苗博士は、グルタミン酸を調味料として工業的に抽出する製造方法を編み出し、特許を取得しました。

 そのグルタミン酸を使った世界初のうま味調味料が、皆さんご存じの「味の素(登録商標)」です。「味の素」を使えば、うま味成分を簡単に料理に加えることができ、簡単に美味しい料理が楽しめるというわけです。皆さんのご家庭にもあるか確認してみてくださいね。

(履歴情報)2022/02/28 掲載

テーマ:デジタル空間におけるデザインの模倣行為

Keywords デジタル空間、デジタルアイテム、形態模倣
法域 不正競争防止法
教科 家庭科、情報

 ファッションに興味はありますか?ファッションと聞くと、服やバッグなどを想像する人が多いのではないかと思います。
 しかし近年、メタバースやオンラインゲームなどのデジタル空間が急速に広がり、アバターが着る服や持ち物といったデジタルアイテムも、現実のファッションと同じように価値ある商品として扱われるようになっています。しかし、これまでの不正競争防止法は「現実に存在する物(有体物)」を前提としており、デジタルデータのデザインが勝手にコピーされても、法律の保護が十分ではありませんでした。例えば、有名ブランドのバッグそっくりの偽物を作って売る行為は違法でしたが、そのバッグを3Dデータとして模倣し、メタバース内で提供しても法律の対象外だったのです。
 このような問題を解消するため、2024年4月1日に不正競争防止法が改正され、デジタル空間での形態模倣行為も新たに規制の対象となりました。改正法では、「商品」の概念にデジタルデータも含まれるとされ、デジタル空間における洋服やアクセサリーなどのコピー行為についても、差止請求や損害賠償請求が可能になります。
 改正後は、現実の製品をデジタル化して提供する場合に加え、デジタル上で創作されたオリジナルデザインを模倣して提供する行為も規制されます。つまり、「現実からデジタル」へのコピーも、「デジタルからデジタル」へのコピーも、「デジタルから現実」へのコピーも、法律によって規制されるようになったのです。デジタル空間でも本物そっくりのアイテムが簡単に作れてしまう現状を踏まえ、クリエイターや企業が安心してデザインを発信できる環境を整えることが、この改正の大きな目的です。
 特にメタバースでは、アバターが身につけるアイテムがブランド価値を形成し、現実のファッションと同様の役割を果たしています。改正法により、例えばメタバース内で人気の洋服デザインを無断で模倣して販売する行為は、不正競争として規制されます。これにより、デジタルファッションの分野でも創作を守るためのルールが整備され、安心して新しいアイデアやデザインに挑戦できるようになりました。


<参考文献>
(1)経済産業省「不正競争防止法等の一部を改正する法律【知財一括法】の概要」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/r5kaisei06.pdf

(履歴情報)2026/03/24 掲載

テーマ:冬なので「編み物」に関するお話を

Keywords 編み図、著作物性、私的利用
法域 著作権法
教科 家庭科

 寒い季節には編み物の暖かさが恋しくなりますね(この記事は冬に書きました)。編み物をされる方の中には手編みの小物などをプレゼントされたことがある方もいるのではないでしょうか。(自慢ではありませんが、筆者も手編みのマフラーをプレゼントしてもらったことがあります。)
 編み物をする(特に、初心者のうち)には、作品を制作するために、手順、目数、段数、編み方記号を平面上に図式化した「編み図」を参考にします。新しい編み物の作品、そしてその作品についての「編み図」を作り出すのは非常に大きな労力がかかります。しかし、「編み図」については、著作物性が認められない(著作権法の保護対象にはならない)という判決例もあり、その保護について十分とは言えないように思われます。では、私たちは「編み図」を自由に利用していいのか、というとそういう訳にもいきません。
 まず、「編み図」や作品についての説明や写真が含まれる書籍(のページ)や電子データには著作物性が認められる可能性が高いです。そのため、そのような書籍や電子データをコピーして配布したり、販売するのはNGです。
 また、「編み図」を利用して作った作品についてはどうでしょうか。「編み図」と同様に「編み物」自体には著作物性が認められないという判決例もあります。一方、「編み図」の利用規約において、編み図および作品の私的利用の範囲を超える利用を禁止していることがあります。皆さんが、Web等を介して「編み図」を入手(購入)する際には、そのような利用規約に同意したことになっている可能性があります。そのような利用規約における「私的利用」の範囲については判断が難しいところですが、仮に、編み物に著作物性が認められたとした場合、著作権法上許される「私的利用」の範囲が参考になると思います。そこでは、例えば、1つ(極めて少数)の作品を特定の人(家族や親しい友人)にプレゼントするのは大丈夫と思われます。一方、作品を大量に作って配布したり、少数であってもフリマサイトなどで販売する行為はNGとなる可能性が高いので注意しましょう。
 いずれにしても、新しい編み物の作品、そしてその作品についての「編み図」を作り出してくれたクリエイターへのリスペクトを忘れずに、その上で「編み図」を利用し、編み物を楽しむことを心がけていただければと思います。

 

<参考文献>
(1)平成22(ワ)39994(平成23年12月26日 東京地方裁判所)
(2)平成24(ネ)10004(平成24年4月25日 知的財産高等裁判所 2部)

(履歴情報)2026/03/24 掲載