日本弁理士会の活動
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先生のための(知財の)ひきだし!水産編
大人でも思わず引き込まれるおもしろ知財エピソード集です。 小学生から高校生までを対象に幅広くご利用ください。
テーマ:保存食品 ~腹が減っては戦はできぬ~
Keywords | びん詰め、缶詰、レトルト |
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法域 | 特許法 |
教科 | 水産 |
「腹が減っては戦はできぬ」 皆さんも実感したことがあるのではないでしょうか。 英語でも同じようなニュアンスの「An army marches on its stomach」ということわざがあるように、これは古今東西・世界共通の認識なんでしょう。 18~19世紀のナポレオンの時代、この問題は切実でした、当時でも、乾燥、塩蔵、くん製等の食品保存方法はあったものの、適用できる食品は多くなく、また、食品の種類が限られることによる栄養の偏りもあり、文字通り「戦ができない・・・」。そのような状況の中、ナポレオンは食品保存方法の発明に賞金をかけ、広くアイデアを募ったのです。 これに応えて誕生したのが、ニコラ・アペール(1749-1841)による「缶詰の原理」です。食品を容器に充填した後、密封(当時は瓶に詰めてコルクで栓をしたようです)し、熱を加えるという、まさに現在の缶詰製造の原理ともいうべき発明でした。彼の技法を讃える次のような言葉もあります。 「アペールは季節を越えて食品を生き生きと保存する方法を発見した。・・・春、夏、秋がびんの中に封じ込められている。」 なお、アペールが上記の発明をしてから数年後には、イギリスでピーター・デュランが容器として瓶に代えてブリキを用いることを考えました。製造の方法はアペールのものと ほぼ同じだったようです が、デュランはこの発明によりイギリス政府の特許を取得したとのことです。 現在では、瓶詰め・缶詰・レトルトパウチ等の多くの製品が流通しています。そこでも、「密封」→「加熱殺菌」という一連の工程が、それらの製品に「常温で流通保存できる」という特徴を与えています。200年前に発明された方法が、現在の工程の基礎になっていることに驚かされますね。余談ですが、私は各地で売っている瓶詰めの「ご飯のおとも」が大好きです。これからは、食品保存技術の歴史にも感謝しておいしくいただきたいと思います!
<参考文献> (1)公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会「缶詰誕生から現在に至るまでの200年の歩み」、2004. https://www.jca-can.or.jp/honbu/200anniv/slide/slide17.htm (履歴情報)2025/03/12 掲載 |
テーマ:食品の貯蔵及び加工
Keywords | 魚介類のにおい |
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法域 | 特許法 |
教科 | 水産 |
魚介類は、魚臭、なまぐさ臭などと呼ばれるような独特の臭気があります。一般に、漁獲直後の海産物は臭気が薄いが、時間の経過とともに臭気が出てきます。魚介類の臭気を抑制する方法としては、古くから様々な方法が知られていますが、例えば、魚介類を、塩、日本酒、柑橘系の果物、酢などで揉む方法や、魚介類の料理に用いた道具の臭気をコーヒー豆のカス、重曹などを用いて消す方法などがあります。
魚介類の臭気に関して、新しいアイデアがあれば特許を取得することができます。もちろん、魚介類の臭気などを考慮した特許もあります。 J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で、2025年1月25日時点で存続している特許の内、「魚臭」に関する特許を検索したところ、308件ありました。 例えば、 ・魚介類を酸性電解水で処理する特許(特許7165453号)、 ・低温高圧下で魚を焼く方法に関する特許(特許第7465404号)、 ・アルカリ水溶液中に大気圧室温下で30分間以上漬け込んだ後に、冷凍する、冷凍魚を製造する方法に関する特許(特許第6389939号)、 などです。
※J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)を用いれば、どのような特許が出願されているのかを検索することができます。新しいアイデアを考えたときには是非検索してみてください。 (履歴情報)2025/03/12 掲載
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テーマ:近大マグロの特許戦略
Keywords | 近大マグロ、近畿大学、養殖 |
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法域 | 特許 |
教科 | 水産 |
近大マグロは、近畿大学が開発した高品質な養殖マグロであり、その成功の背景には特許戦略が大きく関与しています。近畿大学は、クロマグロの養殖に関する独自の技術や方法を特許として登録しており、これにより他の業者が近大マグロと同様の技術を無断で使用することを法的に防いでいます。特許は、発明や技術を保護するための権利であり、近大マグロの品質や安全性を確保するための重要な要素となっています。
近大マグロの特許戦略は、研究成果を商業化するための確固たる基盤となっています。特許を取得することで、近畿大学は自らの技術を独占的に利用でき、他の企業にライセンスを提供することで新たな収益源を生み出すことも可能になります。このように、特許は単なる技術の保護にとどまらず、経済的な利益をもたらす重要な手段となるのです。
さらに、特許技術を活用した養殖方法は、マグロの品質向上や持続可能な漁業の実現に大きく寄与しています。これにより、消費者に対しても高い信頼感を与えることができ、近大マグロのブランドイメージを強化する要因となっています。特に、持続可能な漁業の実現は、環境問題への配慮が求められる現代において、消費者からの支持を得るための重要なポイントです。
こうした取り組みは、近大マグロのブランド価値を高めるだけでなく、業界全体の発展にもつながるのです。特許戦略を通じて得られた技術や知見は、他の養殖業者や関連企業にも影響を与え、全体としての養殖業の質を向上させることが期待されています。このように、近大マグロの特許戦略は、単なる技術保護の枠を超え、持続可能な未来を見据えた重要な戦略として位置づけられています。 (履歴情報)2025/03/12 掲載 |
テーマ:近大マグロの商標戦略
Keywords | 近大マグロ、近畿大学、養殖 |
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法域 | 商標 |
教科 | 水産 |
近大マグロは、近畿大学が独自に開発した高品質な養殖マグロであり、そのブランド名は商標登録されています。この商標登録により、他の業者が「近大マグロ」という名称を無断でマグロやその加工品に使用することが法的に禁止されているため、ブランドの独自性と価値が守られています。さらに、この商標を通じて、消費者は近大マグロが大学の研究に基づいた信頼性の高い製品であることを容易に理解できるようになっています。
近大マグロの商標戦略は、大学の信頼性を活用したマーケティング活動において非常に重要な役割を果たしています。たとえば、近大マグロは独自の養殖技術や厳格な品質管理によって、他のマグロと明確に差別化されており、これが消費者に対する大きなアピールポイントとなっています。また、飲食店とのコラボレーションを通じて特別メニューを提供することで、近大マグロはより広く消費者に認知され、人気を集めています。
さらに、近大マグロは安全性に関する情報を積極的に提供することで、消費者の信頼を高めています。このような取り組みは、消費者が再度購入する可能性を高める要因となり、ブランドの忠実なファンを増やすことにもつながっています。こうした多角的なアプローチによって、近大マグロは市場での存在感を一層強固なものにしており、今後の成長が期待されています。近大マグロの商標戦略は、単なるブランド名の保護にとどまらず、消費者との信頼関係を築くための重要な手段となっているのです。 (履歴情報)2025/03/12 掲載 |