会長あいさつ・意見・声明

OPINION

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平成31年 日本弁理士会会長 新年のご挨拶

日本弁理士会 会長 渡邉敬介    

 新年のご挨拶

 

 日本弁理士会会長 渡邉 敬介

 

明けましておめでとうございます。本年も昨年に引き続き、日本弁理士会の運営について、ご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

昨年の本欄において、知的創造サイクルの停滞が底を打ち、第四次産業革命の改革の波に乗って知的創造サイクルの活性化がもたらされる年でありたいとの希望を述べました。

さて、現実の1年はどうだったでしょうか。昨年6 月に公表された特許出願件数の統計を見ると、2015年から2016年はわずかとはいえ減少が続いていましたが、2016年から2017年はごくわずかながらも増加に転じました。昨年1年の特許出願の統計はまだ出ていませんが、減少が底を打った感があります。昨年は特許法等の改正とともに弁理士法の改正も行われ、弁理士の業務にデータの保護に関する業務と標準化に関する業務が追加されました。また、意匠法についての大きな改正が検討され、特許法についは裁判手続きや損害賠償額について検討されました。これらは、パブリックコメントの募集を先行させ、要望のある方向に沿って検討を進めるという手法で行われました。社会的要望に沿った改正をしたいという思いの表われであると思います。

 

2018年の速報版から推測される昨年の特許出願件数は2017年より若干減少する可能性がありますが、大きな変動はないと思われます。したがいまして、特許出願件数はこの数年同様のレベルで安定しており、本年も昨年および一昨年と同様の水準であろうと思います。しかし、中小企業の特許出願件数は、少なくともこれまでは減少傾向であった大企業とは逆に増加傾向にあります。10年前には3万3千件であった中小企業の特許出願は、昨年または本年には4万件を超える件数になっていると思います。中小企業の知財に関する意識の向上が進みつつあるのを感じます。本年は、中小企業の知財の活用が更に一歩前進することで、日本の知的創造サイクルの活性化も前進すると思います。我々弁理士もこれに積極的に協力していこうと思っています。これに加え、前記意匠法、特許法等の改正が社会的要望に沿って大胆に行われ、制度の魅力、使いやすさが向上すれば、日本の知財の活性化を大きく後押しすることになると思います。本年の通常国会で審議されることになるであろう意匠法、特許法等の改正案について注目していきたいと思っています。

 

一方、昨年の本欄で触れた会務は、「知財広め隊」、内外での広報活動、事業計画と予算の策定についてのアドバイザーの導入、役員室へのテレビ会議システムの導入でした。これらについての昨年の状況とこれからの展望について述べてみます。

 

知財初心者をターゲットとしたセミナーと、地元の弁理士との交流会をセットにした「知財広め隊」は、本年度10カ所での開催が予定されている「巡回特許庁」とのコラボが実現し、「巡回特許庁」の期間中の1日に集中的に行われるイベントの1コマとして参加させて頂いております。「巡回特許庁」で行っている「知財広め隊」は、参加者のアンケートによる評価も比較的良いと伺っており、可能であれば次年度もコラボを継続させていただく方向を考えています。

「知財広め隊」は、「巡回特許庁」での開催の他、「知財広め隊」単独での開催も各地で行っています。「巡回特許庁」とコラボした開催と併せて50カ所での開催を目標に事業を進めています。「知財広め隊」は、各支部が主体となって開催するものと、本部が主体となって開催するものがあります。本年度中はこの両開催パターンを活用していきますが、次年度からは希望する支部での開催に移行する方向で検討しています。

 

国内での広報については、広報の専門機関に策定してもらった、日本弁理士会の広報の基本戦略に基づく第1 段階の広報活動が完了し、昨年行った広報活動の効果確認のためアンケートとその分析が行われました。まだ暫定値であるとのことですが、「弁理士」の知名度の向上の数値目標は何とかクリアできたとの報告を受けています。このため、次年度においては基本戦略に基づく第2段階を実施して頂きたいと思っています。

海外での広報については、Discover IP  Japanが実施にかなりの費用を要することから、今年度はIPO Annual Meetingにブースを出展し、その反響等を見てみることにしました。Discover IP  Japanに比して費用もかなり低額ですみ、反応も悪くなかったとの報告を受けています。継続する価値はあると思っています。

 

事業計画と予算の策定についてのアドバイザーは、ほとんどの副会長が予算の編成に慣れていないことから、特に予算の検討において有益でした。昨年の10 月末に立ち上げられた次年度会務検討委員会においても、同様のアドバイザーを置いて予算の検討を行っています。また、役員室へ導入したテレビ会議システムは、地方から選出された副会長および執行理事が地元の支部の会議室からテレビ会議システムを通じて執行役員会に出席するのに使用しています。地方から選出された役員の労力軽減に役立っております。

 

任期が満了します本年3月末まで精一杯会務に努めてまいります。本年が皆様にとって良い年となると共に、日本弁理士会および我が国の知的財産制度にとっても良い年となることを祈念しまして新年のご挨拶とさせていただきます。