知的財産権の事例

CASE

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特許事例

雪見だいふく

真冬にアイスクリーム!?逆転の発想で開発された。

 「アイスクリームは夏だけのものではない。コタツにあたりながら大福餅を食べる感覚のアイスクリームがあれば、きっと人気商品になるはずだ。」そんな逆転の発想で開発されたのが、このロッテの「雪見だいふく」である。発売以来、若い女性を中心に変わらぬ人気を保っている。さらに高品質化などのイメージアップ戦略で、新たな購買層の掘り起こしを図る。

雪見だいふく

開発者の発想

ロッテはアイスクリーム業界では後発メーカーであり、参入当時は先発の乳業各社が高いシェアを持っていた。加えて2年続きの冷夏の影響で販売が落ち込み、気候に左右されないユニークな商品の開発が急務となっていた。こうした中、四季を通じての人気商品である大福餅にヒントを得て、中身のあんの代わりにアイスクリームを入れることを思いついたのだという。しかし、商品化には色々な問題が待ちかまえていた。アイスクリームを包む餅は冷凍すると固くなってしまい、食感が著しく悪い。餅が柔らかくなるよう暖めて食べたのでは、アイスクリームが溶けてしまう。ロッテは、餅の成分の改良などによってこれらの問題をクリアしていった。同社はこれらの製品・製法を昭和56(1981)年5月に特許出願し、同年10月には全国一斉に発売を開始した。狙い通り、女子中・高校生の間で評判になり、瞬く間にヒット商品となった。

特許出願する

ロッテ商品保護の取組み

一方、特許取得作戦は必ずしも順風満帆だったわけではない。思わぬつまずきもあった。昭和59(1984)年2月に出願公告が行なわれるが、これに対して7件もの特許異議申し立てが出る。翌60(1985)年7月にこの異議が認められ、拒絶査定が下された。ここで諦めてはそれまでの苦労が水の泡、直ちに拒絶査定不服の審判を請求する。4年にわたる審理の結果、拒絶査定は覆され、平成元年(1989)12月に特許を勝ち取る。発売直後から他社の類似品が多く市場に出回っていたが、特許を境にして水が引いたかのように消えていった。その後、「雪見だいふく」はロッテの独占商品として長くヒットを続けることになったのである。
このような「雪見だいふく」の成功は、商品差別化戦略による後発メーカーの市場参入事例として典型的なものであろう。しかしその成功の裏には、「特許」という公権力のお墨付きが無言の圧力となってライバルメーカーを駆逐していったことも、また忘れてはならない事実であろう。