日本弁理士会の活動

ACTIVITY

  • SHARE
  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

平成30年度デザインパテント
コンテスト
日本弁理士会会長賞の
受賞者インタビュー

福岡市立博多工業高等学校

福岡市立博多工業高校は平成29年度からINPIT(工業所有権情報・研修館)の「知的財産に関する創造力・実践力・活用力開発事業」の採択校になっている。同校の知的財産教育委員長を務める建築科の斉藤明日香先生のもとで、3年生 6人が課題研究としてデザインパテントコンテスト(以下、デザインパテコン)に応募した。「図面で応募できるので、アイデアを出すトレーニングとして、各自がテーマを設定してブラッシュアップしていきました」と斉藤先生は応募について語る。

「朝顔のお茶会」で弁理士会会長賞を受賞した同校建築科施工管理コースの中原未裕さんは、過去のデザインパテコン受賞作を見て、花びらの形をした菓子皿がいいなと思い、花をモチーフにすることを決めたという。「普段はあまりデザインをやっていないので、難しかったです。応募締め切りが近づいてきてから思いついたのが、朝顔でした」。

朝顔の漏斗状の花をコップに見立て、外側は円形だが、内側の断面が星形になるように考えた。牛乳を注いで上から見ると、朝顔の花の根元の白い部分が見えるというイメージだった。しかし、このアイデアは課題研究をともにしているメンバーから、牛乳専用のコップなのかと指摘された。

あれこれ思い悩む中で知ったのが、食器にも使われている、温度によって色が変化する塗料だった。内側の断面を星形にするために、コップの縁は場所によって厚みが違う。この厚みの違いが、注いだ液体の温度が表面に伝わった際の温度の違いを生み、コップ表面に塗布した塗料の色にグラデーションがかかる。この効果で、より朝顔の花に近づけることができると思ったそうだ。

中原さんはデザインパテコン応募について、当初は「受賞したら東京に行ける。みんなで東京に行こう!」と盛り上がっていたと言う。一次審査には三人が通った。「一次審査に通っただけで、ものすごくうれしかったです。それから最終審査の結果が出るまでが長くて、毎日インターネットでチェックしていました」。クリスマスの日に弁理士会会長賞受賞を知り、「えーっ、しか言えなかった」と、その驚きと実感のなさを語った。

斉藤先生は知財教育に関わって、次のように感じているという。「パテコンやデザインパテコンで受賞したからといって、発明家やデザイナーになれるわけではないでしょう。でも、答のないものを考える、自分で考える人材を育てるという点で、知財は有用だと思います」。その背景には、先輩教師からの言葉があった。生徒は教師が答を知っていると思っているから、何か質問を投げかけて自分で考えさせることは難しいということだ。デザインパテコン、パテコンに応募するアイデアは、教師も答を知らない何かであり、自分で見いだすしかないと生徒の側もわかっている。この点に、斉藤先生はパテコンの意義を見いだしている。

中原さんにデザインパテコン応募から思ったことを聞いてみた。「要領のいいほうではないのですが、期限のぎりぎりになってアイデアが出てきました。日頃からものごとをひとつの方向からではなくて、違う方向からも見るように心掛けているのが、よかったのかもしれません。自分の考えが偏ったり、世界が狭くならないように、多角的な視点を持つことを意識しています」

その視点をもって、中原さんは社会人として建築関係の企業で実践を積む進路を選んだそうだ。