農水知財の活用Q&A

その他

地域の特産品の販路を開拓するためには、どのような制度を使うことができるでしょうか。

直接的な制度としましては、各地方自治体においてなされている「地域特産品等販路開拓促進事業」や「地域特産品開発支援事業」があります。ただし、地方自治体によって内容や募集の時期が異なっておりますので、詳細は各々の地方自治体にご確認ください。
一方、間接的に地域の特産品の販路を開拓するのに役立つ制度としましては、商標権を取得する「商標登録制度」や、地理的表示を登録する、いわゆる「地理的表示制度」を挙げることができます。このような知的財産権による産品の保護は、取引先に安心感を与え、販路開拓の一助となります。なお、「商標登録制度」における商標は、「地域団体商標」、「団体商標」、「その他の商標」に分けることができます。
商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。
商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。
地理的表示とは、農林水産物・食品等の名称で、その名称から当該産品の産地を特定でき、産品の品質等の確立した特性が当該産地と結び付いているということを特定できる名称の表示をいいます(https://www.jpaa.or.jp/nousui-ip/gi.html)。
「商標登録制度」についてのご相談は、日本弁理士会の「無料相談のご案内(https://www.jpaa.or.jp/howto-request/free_consultation/)」を、「地理的表示制度」についてのご相談は、日本弁理士会の「農林水産分野における無料相談窓口(https://www.jpaa.or.jp/nousui-ip/form.html)」のWebページをご参照ください。

従来の人工いくらを改良して新食感の商品を開発したのですが、この知的財産の保護に利用できる公的補助金にはどのようなものがありますか?

従来の人工いくらを改良して開発された新食感の商品を保護する知的財産権として、特許権と商標権を挙げることができます。例えば、その新食感の商品の製造方法について、特許権として保護することが考えられますし、また、その新食感の商品の名称について、商標権として保護することが考えられます。
従来の人工いくらを改良して開発された新食感の商品を、発明という側面から保護するのが特許権、その商品の名称やシンボルマーク(商標)をブランドの側面から保護するのが商標権なのです。
特許権とは、発明を保護するための権利です。発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度のものをいいます。
また、特許発明とは特許されている発明をいいます。
特許権を取得すると、自身の特許発明の実施を独占できると共に、第三者が無断でその特許発明を実施していればそれを排除することができます(https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/patent/)。
権利の存続期間は、出願日から20年です。
一方、商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。
商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。
特許権や商標権の保護に利用できる公的補助金についてですが、既に開発が完了し、特許権や商標権を取得するという場合、日本の特許権や商標権の取得については、各地方自治体の国内出願補助金や日本弁理士会の出願援助制度(https://www.jpaa.or.jp/activity/support/assistance/)を利用することができる場合があります。また、日本で特許出願や商標登録出願を行なっている場合において、外国でも特許権や商標権を取得したいという場合は、中小企業等外国出願支援事業(https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html)を利用できる場合があります。
一方、未だ開発の余地があるという場合は、いわゆるものづくり補助金(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)を利用することができる場合があり、当該補助金の中で特許権等の取得の支援を受けることができる場合があります。
なお、現在募集中の公的補助金につきましては、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」のウェブサイト(https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support/)にて検索が可能です。

農林水産分野での知的財産についての重要性を感じていますが、どこに何を相談に行けばよいかわかりません。知的財産の適切な保護や活用法など、知財全般についてワンストップ(一箇所ですべて)相談できるとありがたいです。
弁理士に相談すれば、対応してもらえますか?
弁理士ならどこまで対応してもらえますか?

農林水産分野での知的財産について、日本弁理士会にて、ご相談いただくことが可能です。
日本弁理士会では、地理的表示(GI)及び品種登録(種苗法)、並びに特許、実用新案、意匠及び商標に関する各種手続きのほか、諸外国の制度を含む知的財産全般について、また、『農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン』についてもご相談いただくことが可能です。これらの知的財産についての適切な保護や活用法などについて、ワンストップでご相談いただくことができます。
ご相談の際には、農林水産分野における知的財産に精通した弁理士が相談を行います。
弁理士は、知的財産の専門家として次のようなサポートを行います(https://www.jpaa.or.jp/nousui-ip/support.html)。
①知財戦略のアドバイス
事業活動における知的財産の活用法を、調査・分析を通じて提案し、アグリビジネスの経営戦略立案を知財面からサポートします。
②知的財産の権利化・管理のサポート
知的財産の権利化のために、権利調査や出願手続の代理を行います。また、ノウハウの管理も含む知的財産の管理方法についてのコンサルティングも行います。
③模倣品対策
模倣品調査、弁護士との協力による警告状の送付・差止や損害賠償請求、水際措置(輸出又は輸入差止)、その他関係当局への通報等の対応を行います。
④権利の利活用
権利の譲渡やライセンス交渉の代行、契約書作成のサポートを行います。
⑤海外対応
海外法律家とのネットワークを通じ、海外での権利化、模倣品対策をサポートします。
まずは、日本弁理士会の農林水産知財に関する「無料相談窓口」(https://www.jpaa.or.jp/nousui-ip/)までご相談ください。

国内外での農水知財をどのように保護することができるのかについて、セミナーの講師派遣を弁理士会に依頼できるでしょうか。

可能です。
日本弁理士会では、知財支援活動として弁理士によるセミナー講師の派遣や知財に関する相談員派遣を行っております。特に、国内外の農水知財については、農林水産分野の知財に精通した弁理士を講師として派遣することができますので、日本弁理士会(下記)までご相談ください。
例えば、セミナーの例としては、

  • ●新しい植物品種の保護と活用、
  • ●地理的表示(GI)に関する制度と申請に関する留意点
  • ●種苗法(品種登録)や地理的表示法(GI)(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)の制度の概要
  • ●特許法・実用新案法・意匠法・商標法・不正競争防止法・著作権法の各法制度の概要
  • ●外国の知財制度(品種登録・GIを含む)の概要
  • ●品種登録、特許、商標などを組み合わせた知財保護の活用戦略(知財ミックス戦略)
  • ●特許権、育成者権などの侵害
  • ●発明の発掘・特許調査
  • ●ライセンス契約
  • ●小中学生を対象とした知財授業
などがあります。上記は例ですので、これら以外の内容にももちろん、対応できますのでご相談ください。
なお、費用は原則として有料ですが、小中学生を対象とした知財授業などは無料で弁理士を派遣しています。詳細はご相談ください。

(お問い合わせ先)
日本弁理士会 業務国際課
TEL:03-3519-2703
(問い合わせの際には、「農林水産分野のセミナー講師派遣について」とお話しいただくとともに、「国内又は外国のいずれか」をお知らせください。)
Mail:gyoumukokusai@jpaa.or.jp
(メール件名に「農林水産分野のセミナー講師派遣について」と入力していただくとともに、「国内又は外国のいずれか」をお知らせください。)

植物市場での紛争解決手段としてADRはどのように利用されていますか?

植物商品が市場を飛び交う最中に交易者に紛争が生じる、いわゆるコピー商品や偽名称の登場です。逃げる側にも一理の念ありと謝罪せずに紛争の開始となります。紛争当事者の合理的和解により紛争終了となることが最高の解決ですが、人と人、法人と法人、人と法人間の争いは和解が困難なまま紛争継続となり、そこで調停、仲裁、判定請求、仮処分、本案訴訟、刑事告訴等の紛争解決手続の選択となります。さて、紛争解決手段としてのADRとは何でしょうか?
ADRとはAlternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手続)のことであり、ADR法は2004年(平成16年)に制定公布されました。裁判外紛争解決手続とは、訴訟によらずに紛争当事者が選択合意した通常各3人の調停人又は仲裁人による調停手続又は仲裁手続により紛争の解決を目指す制度であって、調停は紛争当事者の最終和解により紛争を終止させ、仲裁は仲裁人の仲裁判断により紛争の解決を見ることになります。
ところで、知的資産や技術など解決判定に専門性の高い知識水準を必要とする分野で紛争が生じた場合、紛争当事者としては納得の得られる専門家を調停人や仲裁人に選任できるのであれば、これに勝ることはありません。訴訟手続においては、紛争当事者は長大な時の経過、限りのない出費に打ちのめされることも多いためです。
ADRは訴訟手続の難点を克服する目的で創定された紛争解決のための知恵であり、解決を早く、安くそして結果満足を標榜します。手続は日本商事仲裁協会(JCAA)、日本知的財産仲裁センター、全国の弁護士会のADRセンター、司法書士ADRセンター、行政書士ADRセンター等に相談すれば手続期間、費用等について案内されます。経済的活動のグローバル化により植物商品において知的財産にかかわる国際的な紛争が生じた場合はICAA(International Commercial Arbitration Association 国際商事仲裁協会)が世界の主要都市、例えば、日本であれば東京と大阪に設置される仲裁機関を紛争当事者の選択合意により利用でき、アジアではシンガポール仲裁所が頻繁に利用されます。植物につき英、仏、蘭、独、イスラエル等の個人や企業は知的資産を多数所有し、国際紛争を果敢に仕掛けてくるので要注意であり、不幸にして紛争に遭遇した場合はADRの利用が得策です。ただし、ADRの利用は紛争の相手方の合意が不可欠であり、相手方が訴訟手続に走る場合は強制できません。早く、安く、満足は紛争当事者の共通の認識と思い込んではいけません。
ADRの現在の活用例は未だ少ないようですが、紛争解決の手段として検討する価値は十分あります。
因みに、はADRの手続過程は次のとおりです。

動物品種を知的財産権としての保護することはできますか?

現時点では、植物の品種と異なり、動物品種(和牛を除く)を知的財産権として直接的に保護する法律はありません。なぜなら、動物品種は、植物の品種と異なり、知的財産権として保護する国際ルールが存在しないからです。また、同じ遺伝子型を持っている植物は、同じ形質(均一性)となり、他の遺伝子型の植物と異なった形質(区分性)を示し、その形質が繁殖による世代が変わっても維持され(安定性)ますが、動物品種は、同じ親から生まれた兄弟であっても形質(能力)にばらつきが大きく、その子孫の形質も結果としてばらつきが大きくなります。そのため、種苗法のような保護ができません。
動物品種を守るためには、優良な特徴と関連する遺伝子を特定し、特許権を取得する、ブランドとして商標権を取得するなど権利として保護するとともに、飼育や養殖方法について営業秘密として管理し、知財知財ミックスとして保護することが、重要になります。