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「特許管理士」商標事件の最高裁上告に棄却決定

 平成11年11月30日に東京高等裁判所で言い渡された「特許管理士」商標審決取消請求事件の判決を不服とした特許管理士会側は、最高裁判所に上告並びに 上告受理申立を行っていたが、平成12年3月30日に上告受理申立が「却下」され、続く上告事件も平成12年6月13日に「棄却」が決定された。この決定 により「特許管理士」商標の無効が確定し、「特許管理士」商標は初めから存在しなかったものとみなされることになりました。
 両事件の決定(原文のまま)は以下のとおりです。東京高等裁判所の判決については、後半の関連記事をご参照下さい。
平成一一年(行ノ)第一七一号審決取消請求上告受理申立て事件
   (当審平成一〇年(行ケ)第二八九号)

決  定

東京都新宿区百人町一丁目一〇番七号一番街ビル特許管理士会内

申 立 人 ○○ ○○
右代理人弁護士大野 幹憲
塩谷 崇之

東京都千代田区霞が関三丁目四番二号

相 手 方 弁理 士会
右代表者理事 幸田 全弘

主  文

本件上告受理申立てを却下する。
上告受理申立ての費用は申立人の負担とする。

理  由

一件記録によれば、上告受理申立書には上告受理申立ての理由の記載がないこと、また、申立人は、上告受理申立て通知書の送達を受けた平成一二年 一月二七日から法定の期間内である同年三月一七日までに上告受理申立ての 理由書を提出していないことが明らかである。
  よって、民事訴訟法三一八条五項、三一六条一項二号により、本件上告受 理申立てを却下することとし、上告受理申立ての費用の負担につき同法六七 条一項、六一条を適用して主文のとおり決定する。

平成一二年三月三〇日

東京高等裁判所第六民事部
裁判長裁判官 山下 和明
裁判官 山田 知司
裁判官 宍戸 充

平成一二年(行ツ)第一二〇号

決  定

東京都新宿区百人町一丁目一〇番七号 一番街ビル特許管理士会内
上告人 ○○ ○○
右訴訟代理人弁護士 大野 幹憲
  塩谷 崇之
東京都千代田区霞が関三丁目四番二号
被 上 告 人 弁理士会
右代表者理事 村木 清司

  右当時者間の東京高等裁判所平成一〇年(行ケ)第二八九号審決取消請求 事件について、同裁判所が平成一一年一一月三〇日に言い渡した判決に対し、 上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり決定する。

主  文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理  由

民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三 一二条一項又は二項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、 明らかに右各項に規定する事由に該当しない。
  よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

平成一二年六月一三日

最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 千種 秀夫
裁判官 元原 利文
裁判官 金谷 利廣
裁判官 奥田 昌道

「特許管理士」商標に無効判決

  長年に渡り弁理士法違反を繰り返してきた問題のある民間資格「特許管理士」の名称について、平成11年11月30日、東京高等裁判所(山下和明第6民事 部裁判長)821号法廷において、「特許管理士」の商標登録の無効を巡る審決取消請求訴訟(平成10年(行ケ)289号)の判決言い渡しがあり、「特許管理士」の商標は無効と判断された。

 この訴訟は、昭和63年に特許管理士会内の個人が保有する商標登録「特許管理士」(新聞、雑誌、その他定期刊行物に使用)に対して、弁理士会が商標法第 4条第1項第7号(公序良俗に反する名称)を理由として請求した無効審判(昭和63審判第5376号)の無効の審決(平成10年7月24日)を受けて、特許管理士会側が審決取消請求訴訟を起こしていたものである。

 この裁判では、「特許管理士」の語が公序良俗に違反し、商標として無効か否かが争点となっていた。  特許管理士会側は審決の取消理由として、(1)「士」を付された民間資格は、「特許管理士」以外にも多数存在している。「士」が付されていることを以て国家資格者と誤認されることはなく、社会公共の利益に反するものではない。(2)「特許管理士」は特許を管理する者であり弁理士法第22条ノ2(非弁理士の業 務取り扱い等の禁止)の範囲外の活動をする者であって、一般国民からして「弁理士」と誤認されるおそれはない、ことを主張していた。  これに対して弁理士会は、(1)「士」が付された資格名称は一般国民からして「法律に定める資格」を想起させる。(2)弁理士法第22条ノ3(名称等使用の 禁止)に定める類似名称とは、一般国民からして弁理士のみが為し得る業務を行うかのような誤認を生じさせるおそれがあるか否かを判断基準とすべきであり、 特許管理士が摘発された事実もあるため弁理士に類似する名称である、として真っ向から特許管理士会側の主張に反論していた。  今回の判決で裁判長は、特許管理の概念は広く特許を管理することであり、これらの業務には弁理士のみが為し得る行為が包含されると定義付けたうえで、 「士」を付された資格名称に言及し、例外はあるものの一般的には国家資格者を想起させると結論付けた。

 さらに、昭和50年から平成8年にかけて特許管理士の名の下に特許管理業務を行い摘発された弁理士法違反事例に着目し、「特許管理士」の語は、一般国民 の間において弁理士にしか許されない業務を行い得る者と誤信され、弁理士と混同されるおそれのある名称として弁理士法第22条ノ3に違反する名称に該当す ると判断。  弁理士会の主張を全面的に認め、特許庁の下した「公序良俗違反に該当」するとした審決を支持する考えを示し、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

 特許管理士会側が、この判決を不服として最高裁判所に上告しなければ「特許管理士」の商標登録の無効が確定する。

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