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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.40
蒸溜所の名を冠するのが一流の証明「山崎」

商標登録 第4312545号

 「山崎」は、サントリー山崎蒸溜所竣工60周年を記念して1984年に発売された。京都郊外の山崎は、サントリーのウイスキー誕生の地であると同時に、国産ウイスキー発祥の地でもある。その地で、日本で初めてのピュアモルトウイスキー「山崎」が生まれた。

 ウイスキーには、世界共通の決まりがある。一般的なウイスキーは、複数の蒸溜所でつくられた数種の原酒をブレンドしたものだ。原酒は原料や蒸溜方法の違いによって、モルトウイスキーとグレーンウイスキーに分かれる。「山崎」は、山崎蒸溜所でつくられたモルトウイスキーのみでつくられる。単一蒸溜所生まれのモルトウイスキーは、ウイスキー先進国のスコットランドではシングルモルトと呼ばれ、その蒸溜所の名が冠される。山崎蒸溜所のシングルモルトであれば、その名は「山崎」でなければならない。

 とはいえ、漢字表記のネーミングは社内でも賛否両論だったという。洋酒と呼ばれていたウイスキーに、日本的なイメージはそぐわないという意識が強く、サントリーでもラベルはすべてアルファベット表記だった。だからこそ、それまでに例のない漢字表記、しかも筆文字のインパクトは大きかった。ラベルの文字は、当時の社長でありマスターブレンダーだった佐治敬三氏の筆によるものだそうだ。

 発売当初こそ、シングルモルトウイスキーの認知度が低かったため、価格の高い「山崎」がいきなり売れることはなかった。しかし、ウイスキー全般の売上が減少する中で、「山崎」は確実にファンを獲得してきた。「山崎」をはじめとするシングルモルトウイスキーは、今や、同社で最も勢いのある商品になっているという。

 2003年に、世界でも権威ある酒類国際コンテストのインターナショナル・スピリッツ・チャレンジで、「山崎12年」がウイスキー部門の金賞を受賞した。さらに2005年には「山崎18年」がサンフランシスコワールドスピリッツコンペティションで、最優秀金賞を受賞し、品切れになるときもあるという。

 商標登録については、発売当初は「山崎」が一般的な氏でもあることから、出願していない。販売実績を積んだ1994年に出願、当然ながら拒絶理由通知がきた。不服審判を経て、3条2項によって1999年に登録が認められた。使用による顕著性を証明する上で、「多くのお得意様から提出いただいたご意見が力になりました」と知的財産部の羽鳥裕子さんは振り返る。

 「土地の個性がはっきり出る、地酒のようなもの」(洋酒事業部・矢ヶ崎哲也さん)であるモルトウイスキーの個性を主張する上でも、山崎蒸溜所を前面に出したブランドイメージを確立することが重要であり、商標登録は大きな意味を持っている。

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