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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.15
「FNテープ」

特許第2630555号、米国特許第5487799号
欧州特許第0626183号、台湾特許第081650号

 東京日進ジャバラ(株)(東京都千代田区 社長青木昭子氏)の「油飛散防止テープ(FNテープ)」は、船火事防止のちょっとした秘密兵器である。

 日本海事協会によると、船火事の多くが機関室火災(年平均6/7件)で、その主な原因の一つが燃料油、或いは潤滑油管継手部分のピンホールや亀裂。ここから噴き出した霧状の可燃油が機関室内の高温部位に接触して出火する。FNテープは事前に危険箇所に巻き付けるだけで可燃油の飛散を簡単に予防でき、誰にでも扱えることが特徴だ。

 東京日進ジャバラは工場配管用伸縮継ぎ手の専業メーカー。畑違いのFNテープを開発したきっかけは、国際海事機関(IMO)の海上人命安全条約が改正されることに対する対応を迫られた海事協会が、東京日進ジャバラの漏液防止用カバーに着目、可燃油の飛散防止にも使用できるのではと相談をもちかけたことにある。

 その依頼に応じてFNテープを発明したのが塚田賢会長だ。「その時、初めて船の機関室というものを見ましたよ。」船の機関室といっても船の種類により油供給管の配管は千差万別。可燃油の飛散防止が必要な個所を数え出すと切りがない。その一つ一つの場所に合うカバーを作ることなど到底不可能だ。塚田会長が考え抜いた最終結論が「不燃テープやシール以外にない。」

 FNテープはアルミ箔、アラミド繊維、特殊接着剤などの多層構造で、一平方センチメートルあたり30〜50キロの突出圧力に耐え、耐熱性、耐油性、耐摩耗性、耐候性などに優れ、日本海事協会を初め、世界の主要認証機関の認証を受けており、本年5月には海のノーベル賞と言われているシートレード賞のうち“海上安全賞”を受賞した。

 “類似品封”に我が国はもとより米国、欧州(EU)、台湾、韓国等の特許も取得済みだ。生産は大手テープ専業メーカーに外注しているが、塚田会長は「特許が無ければ生産を引き受けてもらえなかったでしょう。現在、日本では国内の新造船の約7割、在来船の約3割に採用されていますが、IMOの新条約が海運業界に浸透する2003年頃には世界中の国連加盟国の船舶は、このような船舶機関室火災防止法につき処置を講ずる義務を負っているので、売り上げはさらに伸びますよ」と話している。

(取材協力 東京日進ジャバラ株式会社 代理人 丸山英一弁理士)

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