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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.14
「フライフィッシング・リール」

特許第1252621号、実用新案登録第1551711号、米国特許第4515325号

 あぎやかな弧を描いて宙に舞うライン(釣り糸)。フライフィッシングは、マニアに言わせるとアート。疑似餌をいかに本物の昆虫に似せて魚をおびき寄せるか、それが釣り人の腕の見せどころだ。そのテクニックを支える釣り具の中で、最も技術的に複維なのがリール(糸巻き)で、一種の精密機械だ。

 (株)マシンエンジニアリング(略称=MEG、長野県上伊那郡箕輪村、代表取締役井口七郎氏)のフライフィッシング・リール「マリエット」(登録商標)は、この釣りの愛好者にとって、釣果よりもその所有者であることを自慢したくなるような世界の一級品だ。

 釣り人たちの注目を集めるようになったきっかけは、18年ほど前の米国の釣り具ショー出展。フライ競技のチャンピオンの目に留まり、テレビで紹介される幸運に恵まれた。その一方で、地元の釣り師に勝手に米国特許を取得されるという“災難”にも見舞われる。

 しかし、発明者の伊藤武士さん(MEG顧問)によると、「笑い話のような落ち」で、事なきを得る。相手の釣り師がリールを分解したあと、元通りに組み立てられなくなり、MEGの日本代理店に問い合わせてきた。本当の発明者なら元通り復元できないはずがない。結局、伊藤さんが真の発明者として認められ、米国特許の権利はMEGに帰趨(きすう)することとなった。

 このちょぴり苦い体験が同社を特許に強い企業に変える。同社はもともと自動車や家電、文房具の生産ライン用自動組立機械のメーカー。規模は小さいが独立独歩で、部品製造を外注することも多い。技術支援を伴う外注契約には特許の裏付けが欠かせない。「特許は銀行との取引でも経営力を判断する重要な材料とみなされます。」と伊藤さんは話す。

(取材協力 株式会社マシンエンジニアリング 代理人 湯田浩一弁理士)

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