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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.10
「電柱支持ワイヤーの蔦止め」

実用新案登録2091114号

 ヒット商品は私達が日常あまり目に触れることのない所でも活躍している。

 今回紹介する商品は「電柱支持ワイヤーの蔦止め」である。都会生活者には馴染みがないが、ゴルフ等で一歩郊外に出るとすぐに目に付く商品である。電柱は全国に2千万本あると言われているが、特に山野に立設されている電柱には2〜3本の支持ワイヤーが斜めに取り付けてある。この支持ワイヤーに蔦が巻き付きどんどん上に登る。そしてついには電柱を伝って電線に達しショートさせ停電事故を引き起こす。山奥でこのような事故が起こるとショートした場所の特定や修理が容易ではない。

 そこで登場したのが今回の商品である。この商品の開発のきっかけは、蔦公害に泣かされ続けてきた電力会社からの依頼による。開発を担当したミツギロン工業株式会社の森本重男社長は、「耐久性と完壁性と経済性を同時に満たさなければならない厳しい注文だったけれども、当社のブロー成形技術がヒントになった」という。

 実は従来からこの種の蔦止め具はあったが、何しろ設置場所の年間温度差が70度に達する上に、強列な紫外線と風雪にさらされ、設置後三〜四年で役に立たなくなっていた。

 今回の商品は、長さが1m強で、直径20cm程度の表面が滑らかな合成樹脂製の筒体である。全体が中空の二重構造になっており、軸方向に半割にしてヒンジでつなぎ、支持ワイヤーを挟むようにして取り付ける。なお、本商品と支持ワイヤーとの間に隙間があると蔦はその隙間から更によじ登ろうとして商品を破損させることがある。

 そこで筒体の上下を光が人らないように閉めている。この商品の特徴は全体が二重構造であるため、紫外線や風雪の影響が表面にとどまり、内部にまで達しにくいことにある。また魔法瓶の構造と似ており、ブロー成形された中空部分が70度の温度差を吸収している。その結果、商品自体の膨張収縮係数が小さくなり安定して支持ワイヤーに固定し続けることができる。森本社長によれば、「耐用年数が10年以上に跳ね上がったことが嬉しい。類似商品が出始めているが実用新案登録のおかげでそれらを排除できる。」とのことである。

 この商品がどのようにして蔦を止められるか。蔦は直径20cmの本商品に斜めに巻き付くことができず、たとえ巻き付こうとしてもずり落ちる。また蔦自体が支持板なしで自力で立ち上がれる高さは70cm程度である。そのため蔦はこの商品が取り付けられている位置まで支持ワイヤーをよじ登ってくると、この商品に巻き付きつくこともできず商品を飛び越えて上の支持ワイヤーに巻き付くともできない。蔦は本商品を前にしてそれ以上よじ登れずやがて枯れることになる。

 本商品は蔦を完全に遮断することができるため真冬には蔦が自然に枯死する北海道を除く全国の支持ワイヤーに採用され始めている。

 最後に森本社長から一言、「郊外に出られたら電柱の支持ワイヤーを注目して下さい。

(取材協力 ミツギロン工業株式会社 代理人 杉本勝徳弁理士)

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