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ヒット商品を支えた知的財産権 Vol.3
「クイックルワイパー」

実用新案第2055025号

花王の「クイックルワイパー」

 花王(社長常盤文克氏)のフローリング用掃除具「クイックルワイパー」は、94年秋の発売以来、2年間で200億円以上の売り上げを記録したというヒット商品。しかし、人気商品ゆえに、好調な売り行きと同時に、模倣品の横行という悩みも抱えた。これに対して同社では、実用新案権や商標権、不正競争防止法に基づく権利を行使して、市場からの排除に成功する。望月牧郎特許部長(弁理士)は「損害額は微々たるものだが、会社の信用や消費者の保護を第一に考えて、積極的に手を打ってきた」と振り返る

 クイックルワイパーは、生活環境の変化や人口の高齢化を視野に入れて開発した商品。アルミと合成樹脂不織布を主な材料としているため、軽量で、力のないお年寄りや子供でも簡単に使える。ゴミを吸い取る部分には独自に開発した不織布(特許出願中)を使い、繊維でゴミを絡め取る仕組み。不織布は保持具の穴に挟み込むだけで固定でき、取り替えも簡単だ。そのうえ騒音とも無関係なので、病人の寝ている部屋の掃除にも向く。

 こうした点が消費者に受け入れられ、たちまち市場に浸透するが、その人気が模倣者に狙われることになった。酷似品からコンセプト(考え方)が似たものまで合わせると、一時は十数種類の模倣品が出回った。

 中には包装のデザインがソックリで、中身は粗悪品という悪質なものもあり、真正品と間違えて購入した消費者から花王に苦情が舞い込むほど。こうした事態に同社は、販売店などに警告を出すと同時に新聞広告で消費者の注意を喚起するなど素早く手を打った。また販売店の協力を求めて、模倣品の流通経路を探った。その結果、模倣品は近隣諸国からの流入品であることが分かった。

 現地で製造元を押さえ込むのは難しい。そこで税関で差し押さえるという水際作戦に出た。望月部長はこう語る。「東京税関に申し立てたのですが、WTO(世界貿易機構=ガットの後続機開)条約の発効という背景もあって迅速に動いてもらえた」。

 差し押さえは、大阪などの税関でも行われ、模倣品の流入はほぼ阻止できた。ただ、コンセプトが似通った競合品はいぜん市場に出回っている。望月部長は「コンセプトの類似まで特許で押さえるのは困難。開発に当たっては、基本的な考え方についても権利を押さえられるよう工夫する必要がある」と知的所有権を念頭に置いた開発の重要性を強調している。

(取材協力 花王(株))
注「クイックル」は花王(株)の登録商標です。

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