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知的財産推進計画2006に盛り込むべき政策事項に対する意見の提出(日本弁理士会 技術標準委員会)

内閣官房知的財産戦略推進事務局御中

日本弁理士会
技術標準委員会

 貴内閣官房知的財産戦略推進事務局が意見募集されている標記の件について、日本弁理士会 技術標準委員会は、技術の国際標準化について以下の意見を提出させていただきます。
 当委員会は委員として企業在籍・経験弁理士、国際標準に関連した業務を行っている大学教授弁理士等及び国際標準の推進に強く関心を持った弁護士(オブザーバーを含む)で構成され、産業界の意を汲んで日本の国際標準化活動の 活性化と促進に士業の立場から貢献すべく活動している委員会です。
具体的な活動として推進計画2005に沿った弁理士等士業に国際標準化の意義と国際標準化に参加を促す啓発活動や具体的な技術標準のパテントプールの必須特許の判定を含め、技術標準必須特許の判定を知的財産仲裁センター(日本弁護士連合会と日本弁理士会の共同運営)の業務で扱う促進活動等を行ってまいりました。

I 現在までの成果

 知的財産基本法の理念の一つである日本産業の国際競争力強化の実現に向け、知的財産推進計画2005においても重点項目の一つとして技術の国際標準化に関し戦略的な多くの施策を示して推進され、関係省庁において推進計画に沿っての活動が着々と進展している事は高く評価しているとこであります。
 具体的には日本主導の下、各国際標準機関のパテントポリシーの統一化の検討が積極的に進められていること等や、具体的な成果として「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」の公表がありましたが他の項目についての成果の公表も早期に成されることを期待するところであります。

II 今後の課題

 日本産業の国際競争力強化の施策として短期的には模倣品、海賊版対策が重要であるこことに異論は無いが、中・長期的に見れば技術の国際標準化が最も重要な施策だと認識しております。WTO加盟国はTBT協定により国際標準を優先する仕組みにおいては尚更のことです。
 ご承知のように技術の国際標準化活動そのものが中・長期戦略に基づいてなされるもので、現在の活動の成果は数年先に得られるものです。したがって、数年先の国際競争力を高めるためにも早急な活動が求められるものです。 特に欧米の標準化戦略とは異なり物作りを志向する市場の大きい発展途上国が自国産業の競争力強化のため自国技術の標準化を国家戦略として積極的に推進している状況においては、更に日本国産技術の国際標準化活動を国家戦略として促進することがわが国産業の国際競争力強化に必要と考える次第です。よって、推進計画2006においては基本的には推進計画2005に掲げた施策を早期かつ具体的に実現する施策を講ずる必要があると考えます。
 新たな施策として、

(1)内閣府に国際標準専門組織を設けることを提案する。その機能は次の通りとする。
 ア) 総合科学技術会議では日本の重点研究開発テーマと予算を決めているがこの重点テーマの開発と連動して全体として国際標準化活動の統括機能を持って国際標準化と評価の役割を担うこと
 イ)巨大な市場が期待できる先端技術分野の国際標準化活動に企業の標準化活動と平行して国がリーダーシップを取る形で戦略的な国際標準化活動の役割を担うこと。特に、パテントポリシーの統一の他にも、標準化機関における標準化に関与しない第三者特許の調査が重要課題である
 ウ)日本産業にとって重要な国際標準化活動の積極的な支援の役割を担うことこの専門組織を効率的に動かしていくためにも、国際標準化に向けてリーダーシップを発揮できる人材の育成と長期的な人材確保が重要になるが、この点については下記の第4項で説明する。

(2)日本版バイドール法の付加条項
 国際標準が期待される国の研究開発プロジェクトについては「産業活力再生特別措置法第30条」の「(2)措置の内容」の3つの条件に加え、例えば「特許取得と国際標準を取得すること」を努力義務として明記することを提案する。
 これにより研究開発企業・研究者はモチベーションが上がり、国際標準になり得る技術開発がこれまで以上に進む可能性と新たに生まれた先進的な技術をいち早く国際標準化の場に提案していく土壌が出来ると考える。

(3)税制上の優遇策
 現在実施されている研究開発減税・設備投資減税に加え国際標準化活動に係わる収支については、非課税とする等の税制上の優遇を設けることによって、民間企業における国際標準化活動を促すことを提案する。
  国際標準化活動にはその為の研究開発費と活動費が相当必要とするうえ国際標準を獲得出来ないリスクも相当あるのが普通であり、積極的に国際標準化活動を促すには資金的援助も必要と考える。

(4)国際標準活動人材の育成と人材のプール
  国際標準を勝ち取るにはタイムリーな活動と仲間つくりと国際標準化活動に関与する人材の能力に大きく依存する 。能力としては技術、知財、語学、国際感覚、経営的な多様な知識と交渉能力が求められるものである。しかも国際標準化の場で活躍し実効を得るには長期的な活動が必要とされている。
このような人材の育成を個々の企業に委ねるのではなく国家プロジェクトとして実行することを提案する。
具体的には、国際標準の対象技術の著しい拡大を考慮して、例えば各技術分野の企業、大学、独立行政法人の研究所及び各関係省庁から適任者を選出し、講師としては国際標準化活動で実際に活躍した人も含め講義と実践的な研修を施すこととする。
 そして、このような人材をプールし必要に応じ国際標準化活動に長期的に関与、貢献させる体制を構築することが重要である。なお、そのための対応機関として、前述した内閣府の国際標準専門組織を想定している。

(5)日本知的財産仲裁センターの活用と弁理士の関わり方
 冒頭述べたとおり、同センターは産業界の要請を受けて、2006年度より技術標準必須特許の判定業務を開始する予定である。この判定は、中立性と専門性の条件を兼ね備えた理想的な制度であり、今後はパテントプールの紛争解決等の高度な業務遂行まで役割拡大を図るべきである。また、判定業務には弁理士の技術的専門性が強く活かされるであろうが、そもそも技術標準必須特許の権利取得なくして、国際標準の戦略的推進は意味をなさない。しかるに、弁理士の最重要業務たる権利取得にも国際標準化の意識を浸透させる必要があり、推進計画2006においても意識付けをお願いしたい。

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