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「模倣品・海賊版拡散防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement)」構想について

平成21年12月16日
日本弁理士会

1.「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)構想」への取り組みについて
 ACTA構想に対しましては、2005年のG8グレンイーグルズ・サミットにおいて模倣品・海賊版防止のための法的枠組策定の必要性について当時の総理より提唱されて以来、知的財産権の保護に関心の高い国々とともにその実現に向けて積極的に議論が行われてまいりました。今年度も関係国会合が開催され、参加国間で2010年中の可能な限り早期に妥結させる意図が確認されています。
 このACTAは、知的財産権の執行に関し、各国に共通した高いレベルの新たな国際的スタンダードの確立を目指すものとして、提唱されたものです。かかる提唱後も模倣品・海賊版の製造及び流通については世界的にその撲滅への活動が行われておりますが、インターネットによる拡散はさらにそのスピードと勢いを増し、また、模倣ラベルと本体との分割輸入や国際分業といった流通パターンの多様化、そして製造及び流通双方の手口の巧妙化、国際化が進んでいることなどから、模倣品・海賊版による被害はなおも増え続けている状況です。
 このような模倣品・海賊版の存在は、企業が本来得るべき利益を損失させ、あるいは、創作者の開発と創造意欲を減退させるといったことだけではなく、偽の薬品等、ものによっては消費者の安全や健康を脅かす危険があるものでもあり、さらには、これらの流通に伴う不当な利益が犯罪組織・テロ組織等の資金源になっていることも従来より指摘され続けていることであります。模倣品・海賊版の製造とその流通は国際社会全般に大きな影響を及ぼす見過ごすことのできない違法な行為であり、一刻も早いその撲滅達成が我が国をはじめとした各国において求められております。
 かかる違法な行為に効果的に対応するためには、各国が連携できる強力な法的枠組みの存在が極めて効果的であり、これを実現するACTAの早期締結については日本弁理士会としても大いに期待しているところであります。

2.ACTAの対象範囲
 現時点ではACTAの対象範囲は、模倣品・海賊版問題の中心になっているのが商標権及び著作権侵害にあるとして、これら二つに焦点が置かれています。しかし、本来的には、意匠権侵害を含み得る模倣品・海賊版全体が対象とされるべきものです。
 しかしながら、上述致しましたように、商標権及び著作権侵害を中心とする模倣品・海賊版への対応はますますその重要性と迅速性が求められているところであり、また、各国の知的財産権制度の相違、とくに意匠権についていえば、商標権や著作権にくらべて、その執行等が国によっては必ずしも容易ではないという現実もあります。このため、ACTAの最初の締結に際しては、対象範囲についてもある程度柔軟性を持って考えることが必要であることは否めません。
 この点、ACTAの参加国については、締結の初期段階では知財権保護に高い志を有する国のみが参加し、その後段階的に参加国を拡大していく、ということが目指されておりますことから、保護対象につきましてもこれと同様、段階的拡大を目指していくことが最善の方向性と考えます。

3.日本弁理士会の声明
 以上述べましたようなことから、日本弁理士会と致しましては、まずはACTAの早期締結を図り、模倣品・海賊版の流通経路遮断や模倣品・海賊版の製造及び流通プロセスの複雑化への対応をより効果的なものとするべきである、と思料いたします。また、国際的に流通する模倣品・海賊版への対応に際しては、各国の協力と情報交換は不可欠なものです。このため、日本弁理士会では、従来より各国の知財専門家団体と国際的ネットワークを構築し、また、途上国に対する研修制度を設けて模倣品防止についての教育を行ってまいりました。今後もこのような活動を益々強力に推進していく所存です。
 そして、将来的には意匠権が含められることを前提に、我が国が関係各国とACTAの早期実現を目指し、今後も関係国との議論を積極的にリードしていくという日本政府の方針につきまして、支持表明をさせていただきます。

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