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任期二年目に際してのご挨拶

〜〜プロフェッショナルの真価を発揮しよう!〜〜


会長
中島 淳
(なかじま じゅん)


1.はじめに。
 会長二年目である平成20年度のはじめにあたり、皆様へご挨拶申し上げます。
 昨年度は、「プロフェッショナルの真髄を極めよう」のスローガンのもとに、各種事業を進めてまいりました。特に新弁理士法等による弁理士業務の拡大を推進し、その受皿としての事務所基盤を整備し、外に目を向けて積極的な社会貢献活動を展開し、将来に向かっての知財立国政策を提言・実行し、資質向上のための義務研修へ対応する等、弁理士の各種のスキルの向上及び環境の充実を図ってまいりました。本年度は昨年度の施策を発展させ、これらの成果を、会員が充分に享受できる環境を整備し、また、社会に還元するために、「プロフェッショナルの真価を発揮しよう」を合言葉に以下の各種事業を実行して参りたいと存じます。

2.弁理士業務の拡大およびそのサポート。
 新弁理士法では、水際処置面で弁理士業務の拡大がなされるなど、ここ数年で法律の定める弁理士業務は着実に拡充されています。これに対して、平成12年の弁理士法改正以来、弁理士試験合格者は飛躍的に増加しており、弁理士業務での競争は極めて激しくなっています。
このような実情に対応するべく、昨年度は弁理士業務の拡大の推進を進めました。いわゆる「よくばり作戦」です。専門委員会を中心に、弁理士の本来業務である権利取得や、弁理士業務の拡大に関わる調査研究をし、高度化、広域化への対応を進めました。本年度は、これらの調査研究を掘り下げると共に、さらにこれらの成果を会員が充分に享受できる環境を整備します。これらは、主として、専門委員会、研修所、知財ビジネスアカデミーを通じて実施する予定です。
 弁理士の一部は既に知財の総合アドバイザーとして活躍し、弁理士業務の拡大を実践しています。さらに多くの弁理士が、本来業務である特許などの出願代理だけでなく、創作段階から権利化段階を経て権利の利用活用段階まで一貫して依頼人の知財ビジネスに貢献するとともに、その幅を広げることを望みます。今後はさらに、知財ビジネスアカデミーなどを通じて多くの知財総合アドバイザーを育成する予定です。さらには、このような広域業務への関わりについては、ユーザーへの広報、普及活動に努めます。

3.特許事務所における体制の整備
 弁理士業務を発展させるためには、弁理士や弁理士会組織の充実が不可欠です。特許事務所における体制整備については、昨年度から鋭意進めてきた業務標準や補助者ガイドラインなどの充実と普及とが必要です。
 弁理士がいくらハイレベルの良い仕事をしても、それが知財を通じて社会に受け入れられる内容でなくてはなりません。オープンイノベーション社会へ対応できる弁理士像とはどのようなものでしょうか。昨年度は、弁理士の将来モデルのための研究を開始しました。本年度はこれを継続的に進め、弁理士の将来像を明確にして、弁理士各自が今後の進路を決めるための参考にできるような位置づけにする予定です。

4.会員の会費免除、会員への迅速な情報提供等の会員サービスの充実
 昨年度は、実質的に弁理士業務をしない会員の会費免除や、会員への迅速な情報提供のためのe-メール伝達システムの普及など、会員のためを考えたルール改正を行いました。本年度は、勤務形態に関係なく、さらに広い範囲の会員にとってどのようなサービス体制が望ましいか、また日本弁理士会が会員にどのようなサービスを提供するのが好ましいか、さらに多くの会員が会務活動に参加するにはどうすればよいかなど、弁理士会の会員へのサービスのあり方について真剣に考えて対応して参ります。

5.全国的な地域知財支援活動による社会貢献
専門知識を活用した地域知財支援活動は、弁理士でなければできません。日本弁理士会の社会貢献は、会員の皆様方のご協力により、年々大きな活動となっています。知財支援センターなどの活躍を通じて全国的な地域支援活動が活発になされています。全国での知財セミナー、相談会などへの弁理士会会員の派遣実績は、昨年度の1年間で1,000回を超えています。平均的には、全国どこかで毎日3回の支援活動が通年で実施されていることになります。これらは特に、全国9支部による地域知財への強力な支援活動のお陰であり、外部からも高い評価を得ています。支部会員の絶え間ない協力は弁理士の社会支援活動を基本的に支えていますので、今後とも絶大な協力をお願いいたします。皆様のご協力を支えに、地域知財の新たな支援活動を展開する予定です。

6.弁理士の資質向上を図る継続研修の開始
 昨年度は就任早々に、弁理士法の一部改正法案についての国会対応に時間を費やしました。参議院先議でしたが、皆様のご協力により6月には衆議院において可決成立されました。その後の政省令への対応、これら改正事項に対応するべく弁理士会則以下の例規改正も重要事項であり、弁理士法改正委員会をはじめ多くの会員の皆様のご協力で円滑に進展してまいりました。弁理士の資質向上を図るための継続研修は、本年4月から我々会員に義務化され、5年間で70時間の研修受講義務が生じます。既に会員数は7700人に達しており、このような大人数の会員が洩れなく確実に、かつ安心して法定研修を受ける体制を整えることが大切です。研修所では、どこでも、いつでも、何度でも受講できる、e-ラーニング研修の充実を進めてまいりました。しかし、事情によりe-ラーニングに対応できない会員もおり、継続研修に対応する幅広い座学研修も準備する予定です。このための、会場やスケジュールの準備は今後も引き続き対応するべき重要課題です。
 その他に、新弁理士法では、弁理士登録前の実務修習制度、弁理士業務の拡充、名義貸し禁止などコンプライアンス向上があります。これらについて、細部が決まっていない事項もありますが、今後の政省令への対応、新コンプライアンス制度の構築、会員への周知、などについて引き続き進めて参ります。

7.他団体との協力体制
 弁理士や日本弁理士会は単独で生きることはできません。社会と密接な係わりを持っています。日々の業務や活動においても、外部との円滑なコミュニケーションをとり、外部の考えを充分に理解することが極めて大切です。このため、日本弁理士会は、特許庁や裁判所などの各種官庁、大学、学会、その他の関係者と緊密な関係を築いています。今後とも国内や海外諸団体と円滑なコミュニケーションを保ち、社会の中での弁理士の存在と活躍を理解して下さるように努めて参ります。

8.まとめ
 本年度は、昨年度の就任当初に計画した2年度分の事業計画の仕上げの年となります。このような弁理士や弁理士会が対応すべき多くの事柄に充分に応えるべく、引き続き充実した会務運営にあたります。我々弁理士の専門知識を活用すれば、様々な局面で社会に大きく貢献できて知財立国が実現でき、その結果、弁理士業界も繁栄することを信じて、この1年間会務の運営にあたります。弁理士が活躍すれば、社会が良くなります。そのための環境整備に専念します。何とぞ、ご協力、ご支援、ご指導の程をよろしくお願い致します。

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