今回の意匠法改正の目的は、「ハーグ協定ジュネーブアクト」(以下「ハーグ協定」といいます。)へ加盟し、ハーグ協定のシステムによる意匠の国際出願への対応を可能とすることにあります。したがって、従前の国内出願は意匠法改正の影響を受けません。なお、話題に上がっていた「画像デザインの保護拡充」は見送られました。
ハーグ協定は、意匠の国際出願の手続きを定めた条約です。特許におけるPCT、商標におけるマドリッドプロトコルに対応する制度といえます。従来、ヨーロッパの無審査国(審査をせずに登録される国)を中心に46の国及び機関(2013年末・特許庁)が加盟していましたが、今後、日本、韓国、米国などの審査国が加盟することになります。
一つの出願手続きで、複数の加盟国で意匠権を取得できます。しかし、意匠権は「国ごとに」登録されるのであって、「世界共通の意匠権」ができるわけではありません。審査国であれば、各国の「意匠法」に基づいて審査されます。
出願は「WIPO」(国際事務局)へ直接行うのが原則です。特許庁へ出願することはできません。特許庁は仲介官庁として受け付け事務を行う予定ですが、WIPOが特許庁から出願を受理して出願手続きが完了します。
国際出願の指定国に日本を含めることが可能ですが、そのときでも出願書類は英語で作成する必要があります。
国際出願が受理されると、原則、即日に国際登録され、国際登録日が各「指定国」での出願日として扱われます。しかし、まだ権利は発生しません。
国際登録日から6ヶ月後に「国際公表」されます。無審査国では、この時点で国内登録され、その国での意匠権が発生します。審査国では、各国の法律に基づき審査され、登録の可否が判断されます。
・拒絶理由がないとき
特許庁はWIPOに「保護認容通知」を送り、日本で意匠登録されます。
・拒絶理由があるとき
特許庁はWIPOに「拒絶通報」(英語)を送り、WIPOから出願人に通知されます。
以後は「国内」の手続きになり、出願人は、意見書、補正書などを特許庁へ提出することができます。
特許庁に提出する「意見書」は日本語です。補正書は一部が英語となります。
拒絶理由が解消されれば、特許庁はWIPOに「拒絶通報の撤回」を通知し、日本で意匠登録され、拒絶理由が解消されない場合は「拒絶査定」となります。以後の手続きは、審判、審決取消訴訟など国内出願と同じです。
(1)複数の意匠を含む出願
国際意匠登録出願では、一つの出願に複数の意匠を含めることができますが、日本の意匠法では、一つの出願には一つの意匠、となっています。そこで、日本に入ってくる国際出願は、意匠ごとに個別の出願として扱い、権利も個別に発生する扱いとなります。
(2)新規性喪失の例外の手続き
国際意匠登録出願には、新規性喪失の例外の主張手続きがありません。そこで、日本では国際公表から一定期間の間に、特許庁に対して主張の手続きをすることになります。
(3)秘密意匠
国際意匠登録出願に係る意匠が日本で登録されるときには、すでに国際公表されて意匠は公知になっています。そこで、国際意匠登録出願については「秘密意匠」の適用はありません。なお、秘密の維持したい場合、先に述べた「国際公表」を繰り延べすることが可能です(最長30ヶ月)。しかし、その分だけ権利の発生も遅くなります。
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