弁理士法第1条には、従来規定されていた「目的条項」に代わって、「使命条項」が創設された。この使命条項は、従来の目的条項において使用されていた「工業所有権」という文言から、「知的財産権」という文言に変更され、弁理士の存在意義、社会的責任などのとらえ方が刷新されることに繋がる。(全国に約420万社存在するといわれる中小企業の知財活動に活力を与えない限り我が国の経済産業活動に将来はない。弁理士は、使命条項の創設に伴って、その社会的責任の重さを従来にも増してしっかりと受け止め、中小企業等の活動を支援していかなければならない。また、そのためには自らの規律も糺さなければならない。)
この条項は弁理士の根幹業務を規定している。今回の改正によって、意匠の国際登録に関するハーグ協定に係る出願(以下、意匠に係る国際登録出願という)が、新たな業務として追加された。
従来から規定されていた水際業務、裁判外紛争処理業務に関して、第3号として、これらの業務に関する「相談」業務の明記が行われた。
今回の改正において、従来から規定されていた業務に関する相談業務の明確化が図られている。その中において、第4条第3項第1号の契約代理業務は、従来から相談業務を明記している唯一の条項である。
第2号の外国出願関連業務は、第4条第1項の業務同様に、「その他の事務」という文言の中に「相談業務」が含まれるという位置づけであり、あえて「相談」という文言の明記は行われていない。
第3号は、出願以前のアイデア段階における発明発掘等の相談業務に関する規定として新設された条文である。この条文は、「保護に関する相談」に限定されているが、これは、弁理士が相談を受けることの主たる目的が、出願の有無に拘わらず、依頼者の知的財産権の「保護」にあるためである。なお、著作物に関する相談は規定されていないが、これは、著作物の創作と同時に著作権が発生するためである。
また、第3号に「事業活動に有用な技術上の情報」を規定しており、これは、出願という保護手段に限らず、弁理士がノウハウとしての保護を視野に入れた相談を受ける場合も含める趣旨である。
意匠に係る国際登録出願についての補佐人業務を規定した。
利益相反行為の見直しとして、弁理士が特許業務法人在籍中に「自らこれに関与したもの」という限定がかけられた。これによって、事務所内情報遮断措置等の必要な措置を講じている特許業務法人(甲)に在籍していた期間に、自ら関与しなかった弁理士は、当該特許業務法人(甲)退職後に別の特許業務法人(乙)に異動した際に、自ら関与していなかった事件については、異動後の特許業務法人(乙)において関与しても利益相反の対象から外されることとなる。
第2項として、弁理士の使命・職責が、特許業務法人にも適用されることが規定された。この使命・職責が弁理士個人のみならず特許業務法人に対しても適用されるという規定ぶりは、従来は弁理士法には存在しなかったが、弁護士法や公認会計士法には従来から存在していたものであり、今回の改正によって弁理士法も手当てされた。
従来は、「弁理士会は、弁理士の使命及び職責にかんがみ」と規定されていたが、今回の改正によって「弁理士会は、弁理士及び特許業務法人の使命及び職責に鑑み」と規定された。これは、第37条の改正と平仄をとったものである。
因みに、今次の改正にて第1条の使命条項が規定されたことにより、本条との平仄もとれるに至った。
従来規定されていた経済産業大臣による日本弁理士会の役員を解任する権限が廃止された。これは、日本弁理士会の自治の拡大である。
第4条に規定された意匠に関する国際登録出願業務が、弁理士の専権業務として規定された。
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