支援活動だより178_webbook
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知的財産支援活動だより2017年2月号(No.178) 75 1.日  時:平成28年12月10日(土) 14:00~16:302.場  所:神戸市産業振興センター3.テーマ:職務発明規程整備のポイント ~新法施行後の各社対応状況を踏まえて~4.講  師:弁護士・弁理士 飯島歩5.受講生:72名6.コメント: パテントセミナー2016神戸の午後の部は、弁護士・弁理士の飯島歩会員をお招きして、「職務発明規程整備のポイント」というテーマで講義いただきました。受講者も、神戸会場にしては多い72名の方々にご参加いただきました。 職務発明の対価の請求権が、原則として10年間消滅しないことから、各企業は、昭和34年改正法、平成16年改正法、及び平成28年改正法という3つの改正法に対応した職務発明規程を持つ必要があります。このため、企業の中には、平成28年改正法への対応を、現行の職務発明規程の安易な修正で済ませようとしている所も少なくないようです。 飯島会員の講義は、上記のような安易な対応に警鐘を鳴らすと共に、平成28年改正法と「相当の利益」のガイドラインに沿った、職務発明規程の改定のポイントを解説するものでした。 飯島会員は、まず、今回の法改正の背景と目的について、(自分が代理人になられた)「バリ取りホルダー事件」のように、発明者による「特許を受ける権利」の二重譲渡を防ぐために、使用者に、職務発明についての特許を受ける権利の原始取得を認めたという点を解説されました。そして、その後、飯島氏は、①外国出願との関係で、譲渡証が不要になる訳ではないという点や、②職務発明規程における権利取得の規定が、手続規定(例えば、「従業者が職務発明をしたときは、速やかに会社に届け出て、権利の譲渡証を提出しなければならない」という内容)ではなく、実体的規定(「従業者が職務発明を完成したときは、会社は当然に特許を受ける権利を取得する」という内容)になっていなければならないという点や、③改正法における「相当の金銭その他の経済上の利益」(以下、「相当の利益」と略す)は、実際には、金銭の支払い以外に考えられない(それ以外の「相当の利益」(留学や昇進)では、従業員との間で訴訟になったときに、職務発明との紐付けの立証が難しい)という点や、④35条第5項における「その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理である」か否かを判断する際には、手続(従業者との協議の状況、策定された基準の開示状況、相当の利益の内容の決定について行われる従業者からの意見聴取の状況)が重視されるという点について、説明されました。 そして、最後に、飯島会員は、「請求起因方式」(金銭的利益(対価)の請求可能な時期を、毎年何月からと決めた上で、発明者の請求を起因として金銭的利益の算定を行い、支払をする方式)が、消滅時効起算点の明確化をする上で、お勧めであると述べられました。その理由は、この方式であれば、退職者や死亡者との連絡が取れない場合でも、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」(民法166条第1項)ので、元従業者やその遺族からの請求がない場合でも、請求可能な時期から10年の経過により、元従業者やその遺族への支払義務が、順次、時効により消滅するからです。 講義終了後は、昨年の大阪応用編の時と同様に、飯島会員のところに質問者の長い列ができました。特に、企業の知財部門の方にとっては、得ることの多い講義であったと思います。(注:上記の「相当の利益」のガイドラインの正式名称は、「特許法第35条第6項に基づく発明を奨励するための相当の金銭その他の経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する指針」です。)近畿支部知財普及・支援委員会 水田慎一「パテントセミナー2016 神戸 午後の部」講師:飯島歩会員会場の様子

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