「著作権法改正について」-著作権委員会(掲載日:2004年8月9日)

著作権委員会からのお知らせ「著作権法の改正について」

著作権法が一部改正され、2005年1月1日から施行されます。

今回の改正の主たる内容は、
(1)国外頒布目的商業用レコード(日本販売禁止レコード)の還流防止措置、
(2)書籍・雑誌の貸与について貸与権の対象としないとする経過措置の廃止、
(3)著作権等侵害についての罰則の強化、
の3点です。

(1)国外頒布目的商業用レコード(日本販売禁止レコード)の還流防止措置

→113条5項の新設

(1)改正内容
国内において頒布することを目的とする商業用レコード(「国内頒布目的商業用レコード」という)を自ら発行し、又は他の者に発行させている著作権者又は著作隣接権者が、同一の商業用レコードであって、専ら国外において頒布することを目的とするもの(「国外頒布目的商業用レコード」という)を国外において自ら発行し、又は他の者に発行させている場合、当該国外頒布目的商業用レコードを、情を知って、国内において頒布する目的をもって輸入し、国内で頒布し、若しくは、頒布の目的をもって所持する行為は、当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り、当該著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなすこととなります。
ただし、国内において最初に発行された日から起算して7年を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した商業用レコードについては、適用除外となります。
また、改正法施行前に輸入され、施行時に頒布の目的をもって所持されている商業用レコードについても適用されません(附則経過措置2条)。

(2)改正理由
平成11年法改正により、映画の著作物を除く著作物の原作品又は複製物の公衆への譲渡に関して、著作者に譲渡権が創設され(26条の2第1項)、また、実演家及びレコード製作者にも譲渡権が認められました(95条の2第1項、97条の2)。したがって、音楽著作物が録音された市販目的のレコードの複製物である商業用レコード(2条1項7号)を、公衆に譲渡するためには、著作権者、実演家、レコード製作者の許諾を受けることが必要となりました。しかし、同時に、著作物等の円滑な流通の確保という観点から、上記権利者の許諾を得て、国内、国外を問わず、一旦適法に公衆に譲渡された場合には、譲渡権は消尽することが規定されました(「国際消尽」の考え方の採用、26条の2第2項、95条の2第3項、97条の2第2項)。したがって、権利者の許諾を得て国外で適法に譲渡された著作物等を輸入し、国内で公衆に譲渡する行為に対しては、譲渡権は働かず、上記権利者の許諾なく行えました。
ところで、近年、韓国において、日本語の音楽レコードの販売が解禁されたように、日本の音楽産業が、とくにアジア諸国に対し、積極的に国際展開していく機運が高まってきています。しかしながら、その場合には、上記のとおり、譲渡権が働かないため、海外でライセンスされた日本よりはるかに安価な日本の音楽レコードが、国内に還流することが懸念され、国内の音楽産業に大きな影響を与える可能性が懸念されてきました。他方、60ヶ国以上の国で、「輸入権」、「国内の域内消尽の頒布権」等、著作権法上、何らかの還流防止措置を設けている事実もあります。
そこで、専ら国外において頒布すること(日本における販売を禁止すること)を目的に海外にライセンス等された音楽レコードの日本への輸入又は輸入後の譲渡等の差止めを認める本措置を設けることとしました(平成16年1月文化審議会著作権分科会報告書「以下、報告書」P10~15参照)。

(3)なお、本改正には、消費者利益に反する、他の著作物等へ対象の拡大が懸念されるといった反対意見もあって、附帯決議がなされ、本措置の存在が、欧米諸国からの洋楽レコードの並行輸入及びすべての商業用レコードの個人輸入等を阻害することのないよう著作権者等に対し最大限の配慮を求めること、日本のレコード会社は日本国内発売禁止と外から見えるようジャケット若しくはインレイ(注 CDのプラスチックケースの裏側に封入される背表紙も兼ねる印刷物、通例曲目等も印刷される)に表示するようライセンシーに要請するなど適切に対応すること等、13項目の事項が決められました。

(2)書籍・雑誌の貸与について貸与権の対象としないとする経過措置の廃止

→附則4条の2の削除

(1)改正内容
附則4条の2「新法第26条の3の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。」を削除し、書籍又は雑誌の貸与による公衆への提供について貸与権が及ぶこととしました。

(2)改正理由
貸レコード業をはじめとするレンタル業の発達に対応するため、昭和59年の著作権法改正により、映画以外の著作物の複製物の公衆への貸与について、貸与権が創設されました(26条の3)。
しかしながら、書籍・雑誌の貸与については、(a)貸本業が我が国で長い歴史を持ち、これまで自由に行われてきたという経緯があり、社会的にも定着している業であったことから、関係者の理解を得られにくい状況にあったこと、(b)貸本業が大きな経済的利益をあげているという実態になく、貸本業の存在により本の売れ行きが大幅に減少するといった、著作権者の経済的利益が不当に害される事態が生じているという状況にはなかったこと、(c)仮に貸本にも貸与権が働くこととした場合においても貸本業者は権利者の許諾を容易に得ることができる集中管理体制が整っていなかったこと、等から、当分の間の措置として、貸与権が働かないこととされました(附則4条の2)。ただし、書籍・雑誌の中でも、主として楽譜が掲載内容となっているものについては、貸楽譜業の実態に鑑み、権利者の利益にも大きく関わることから、原則どおり貸与権が働くこととされました。
しかしながら、近年、人気のあるコミックやベストセラーの書籍を大量に品揃えし、レンタルビジネスを大規模に展開するレンタルブック店が全国各地で営業を開始してきており、著作権者の経済的利益に多大の影響を与える可能性がでてきました。また、昭和59年当時に書籍・雑誌の貸与権の創設に反対を表明していた旧来の貸本業者の団体である「全国貸本組合連合会」と作家等の著作権者との協議が整った状況も考慮され、上記暫定措置を廃止し、書籍又は雑誌の貸与による公衆への提供について貸与権が及ぶこととしました(報告書P4~9参照)。

(3)なお、改正法の公布日の属する月の翌々月の初日において公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌の貸与については、引き続き無許諾で貸与できることとされます(附則4条)。

(3)著作権等侵害についての罰則の強化

(1)改正内容
著作権等の侵害についての懲役刑及び罰金刑の上限を引き上げるとともに、これらを併科できることとしました。
(119条から122条まで及び124条関係)
(懲役刑)
3年以下の懲役→5年以下の懲役
1年以下の懲役→3年以下の懲役
(罰金刑)
1億円以下の罰金(法人) → 1億5,000万円以下の罰金
300万円以下の罰金 → 500万円以下の罰金
100万円以下の罰金 → 300万円以下の罰金
また、従来、著作権侵害には懲役刑又は罰金刑が科されることとされていますが、重大な侵害であって懲役刑が言い渡される場合でも、執行猶予が付いた場合には、罰金刑が科される者より実質的に軽い処分となり、制裁として十分でない場合があるとの指摘がありました。そこで、抑止効果を期待する観点から、特許法等の他の知的財産関係法には例がないが、その他の法律については多数の例がある、懲役刑と罰金刑の併科を認めることとしました(報告書P66~69参照)。

以上