平成29年 日本弁理士会会長 新年のご挨拶

日本弁理士会 会長 伊丹 勝    

 新年のご挨拶

 

 日本弁理士会会長 伊丹 勝

       

 

新年おめでとうございます。

 

年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

 

(1) はじめに

  一昨年の4月に会長に就任してから、早いもので残り任期を3ヶ月残すのみとなりました。振り返ると、あっという間の1年9ヶ月であったように思います。思うように物事は進まないもので、ここまで来てやり残した宿題の処理に追われている次第です。しかし、まだ3ヶ月を残しておりますので、引き続き気を緩めることなく、全力で会務を進めて参りたいと思っています。
 さて、世界情勢は混迷を深めています。反グローバル化、保護主義の声が高まり、米国のトランプ次期大統領選出、BREXIT 等の事象が現れております。日本経済にとっては、企業のグローバル化や国内産業の保護を見据えて、バランス良く経済を循環させていくことが重要ではないかと思う次第であります。いずれにしても、資源が少なく、人々の英知で成り立つ我が国において、知的財産は国力の源泉であり、企業の競争力を高める重要なツールであります。知的財産を適正に保護し、活用することが、次の新たなイノベーションを生み出すことにつながります。知的財産の専門家である我々弁理士は、知的財産の保護と活用をより一層推進して、今後も経済の発展に貢献する使命があります。我々に求められているニーズを的確に捉えて、企業のグローバルな展開の支援や中小企業・ベンチャー企業の知財活用支援等を引き続き進めて行く必要があります。

   

(2) 地域知財活性化

  地方の中小・ベンチャー企業の知財支援活動は、地方創成を掲げる国の重点施策であり、地域知財活性化行動計画の中に弁理士などの関連する専門家・機関のリソースを総動員するとあります。知財総合支援窓口での窓口専門家による相談件数も平成27年度には12,000件を超え、そのうち10,000件について弁理士が対応しています。このような個別の相談やセミナー等の支援だけでなく、「知財活用途上型」中小企業に深く入り込む支援も必要であります。昨年度より実施している「弁理士知財キャラバン」は、「知財活用途上型」中小企業に知財活用の気付きを与える活動として少しずつ定着してきました。活動を通じて得られたことは、自分の企業の経営課題に対して具体的な知財活用の方策を提案することが、経営者に気付きを与える最も良い手立てであるという確証です。既に100 件近くの支援依頼のうち40件近くの訪問支援が終了し、経営者から「もっと知財について学ばなければならないと感じた」、「戦略的な知財の活用をしようと感じた」などの声が寄せられています。今後も活動の継続が必要と考えます。


 また、国が進める様々なプロジェクトへの参加も増えてきました。新輸出大国コンソーシアム、ローカルベンチマーク、知財創造教育推進コンソーシアム等、企業活動や教育の支援の場が、これまで以上に拡大しております。そのような中で、自治体との支援協定も、昨年度は徳島、香川、鹿児島の3県、本年度は広島県と締結しました。これにより、協定締結数は、21道県、4市、その他4となりました。2月には、佐賀県との協定も予定されています。日本弁理士会に対する社会的な期待がますます高まっている結果と言えるでしょう。支援の強化を図るために、「知的財産経営センター」を設立すべきと考えます。

   

(3) 国際活動

 米国、欧州、中国、韓国をはじめ、様々な地域の団体、公的機関との交流がますます活発化してきております。昨年もこれらの団体、機関との日本又は海外での交流が多数行われました。今後も、より一層深い関係構築を形成することが重要です。

 また、本年度は、2月に米国企業・代理人向け「ディスカバーIPジャパンセミナー」をシアトルとパロアルトで開催します。日本の優れた知財システムを海外ユーザに直接伝えて日本への知財投資を促すのが狙いです。また、2月下旬には、ベトナムのハノイでアジアの知財専門家を対象とした「アジアセミナー」を開催します。このような活動は、国際活動センターのセンター員の会務活動によって支えられています。

 更には、昨年度に引き続き、本年度も第3回のプレジデントミーティングを東京で開催します。東京で開催された2回のプレジデントミーティングでは、グローバルな知財システムについて、各国弁理士団体等が連携していくことの重要性を認識し、各国の事情を尊重したグローバルな知財制度構築の方向性、各国の弁理士の果たすべき役割などの議論をし、共同宣言書を取りまとめました。今年も、知財システム検討委員会の企画のもと、有意義な情報交換、より深い議論及び関係構築がなされるものと期待しております。

 このような国際活動に対応可能な人材を育成するため、本年度よりグローバル人材育成研修を始めました。非常に実りある研修であったとの声が寄せられています。研修修了者には積極的に日本弁理士会の国際活動に協力して頂きたいと思います。

   

(4) 次世代知財システム

 昨今、IoT、AI、ビッグデータ等のキーワードを聞かない日がないほど、第四次産業革命と呼ばれる産業構造の大きな変化が押し寄せてきています。工場の生産ライン、交通インフラ、サプライチェーン、医療、農業等の分野での革新的変化が期待されています。このようなシステムにおける新たな情報財の保護と利用のバランスをどう図るのか、無用の紛争が生じないように、しっかりとした法整備が必要です。新たなシステムに対して、知財制度を見直すことは必要であるとは思いますが、イノベーションの意欲を削ぐような極端な方向に進むことは好ましくないと考えます。日本弁理士会としても、今後、新たな時代に即した知財システムのあり方について積極的に提案していくべきと考えます。

   

(5) 終わりに

 我々を取り巻く経済環境は、依然として厳しい状況が続いています。しかし、我々弁理士は、知財という国力の源泉を絶やすことがないように、常に意欲ある挑戦者を知財というツールでバックアップし、イノベーションの創出を推進することにより、世界経済の発展に大いに貢献していくという視点が大事であると思います。その結果として、弁理士業界の更なる活性化につながるのだと思います。本年度も残り3ヶ月ですが、会員の皆様のご理解とご協力を何とぞ宜しくお願い申し上げます。