平成25年度 会長就任のご挨拶

会長 古谷 史旺

会長 古谷 史旺

就任のご挨拶

 

弁理士の存在価値を高める

次世代に引き継ぐシッカリとした礎を築こう

 

 

 

1.はじめに

 平成25年度の会長就任に際し,会員の皆様にご挨拶申し上げます。

 昨今の急激なグローバル化に伴ってユーザは過酷な国際競争に晒され,多くの弁理士も,ともすれば過剰とも思える知財活動の競争に巻き込まれ疲弊した状況にあります。そして,若手弁理士は,弁理士にはなったものの将来像を描けず,何をすれば良いか迷い,自信を喪失しかけています。

 しかし,競争に晒されている立場であるからこそ,我々は従前にも増して自助努力を重ね,グローバルな視点での専門性,競争力を高め,ユーザに資するさらに高度な専門サービスを提供する集団を目指すべきです。

 そして,その専門サービスの提供を通じて弁理士に対する社会の適正な評価…それは時として報酬,名誉,あるいは社会貢献に対する満足感,達成感など,人それぞれの価値観によって計られるべきものですが…を獲得し,弁理士としての職務にやり甲斐と誇りとを実感できる環境を我々の力で勝ち取っていかなければなりません。さもなければ,将来を担うべき弁理士は夢と希望を持つことができず,弁理士制度はいずれ過去のものへと葬り去られることになります。それは国家に途方もない損失をもたらすはずです。

 

 私は,高梨範夫,小島高城郎,富澤 孝,青木 篤,田中達也,長濱範明,石橋良規,石川 憲の各副会長とともに,弁理士の存在価値をさらに高め,弁理士が自信と誇りをもって,そして,夢と希望をもって職務に励むことができる,さらに強固な礎を構築することを『使命』として,平成25 年度の事業を進めます。

 

2.重点事業について

(1) 人材育成と業務支援

(2) 活力ある知財制度の実現

(3) 誇りの持てる弁理士制度の実現

(4) 啓発活動,支援活動

(5) 役員制度の見直し

(6) 弁理士会組織の見直し

 

○人材育成と業務支援

 *ベテラン弁理士のスキルを若手弁理士に移転する実務能力育成プログラムを開発し,そのプログラムに基づいた演習指導型の『弁理士育成塾』を立ち上げます。

 *企業内弁理士向けの研修プログラムを開発し,その実施及び企業への便宜の提供を図ることにより,企業内弁理士のスキル向上を支援し,企業内弁理士の存在価値を高める支援活動を展開します。

 *若手弁理士のさらなるスキル向上を図る機会の拡大に取り組みます。

『弁理士育成塾』の修了者等,一定の初期導入教育を済ませた弁理士と,人材を求める事務所,企業等とのマッチングを図るといった手法により,若手を実務段階へと移行させる仕組みを導入します。

 *弁理士業務の拡大を検討し,その実現を目指します。

 出願代理業務の市場が明確に縮小する中,座して市場回復を待っても活路は開けません。我々弁理士が,これまでの業務経験を活かして新たに開拓し,進出することが可能なビジネスは,専権業務の分野,及び周辺関連業務の分野のいずれにも必ず存在するはずです。それらのビジネスの可能性を組織的に検討し,検討結果を会員に還元します。

 *事務所の競争力強化の取り組みを支援します。

 グローバルな視点での権利取得費用の低減に資する国内代理人業務のあり方を検討し,その改善策を会員及びユーザに提案します。特に,海外で国,地域毎に発生する費用を低減してユーザの知財活動費用の海外流出を抑えるため,我々日本弁理士がユーザに提供すべき業務のあり方を検討し,その成果を会員及びユーザに提案します。

 

○活力ある知財制度の実現

 知財制度の改正動向及び方向性を継続的かつ中長期視点で検討する会内横断的な知財制度検討組織を設置し,筋の通った政策提言を継続的かつタイムリーに発信する仕組みを創設します。

 特に,産業界・関係省庁・政界等の外部団体との意見交換,交流を積極的に取り組み,ユーザに資する制度構築を提言していきます。

 

○誇りの持てる弁理士制度の実現

 弁理士のスキル向上のための努力及び成果を武器として,弁理士の存在価値を外部に積極的に発信し,弁理士の努力を専門職としての誇りに結び付けられる弁理士法改正(業務範囲,研修制度,秘匿特権,使命条項,非弁行為要件,等々の見直し)が実現されるよう働きかけます。

 また,パッチを当てるような試験制度の小手先の改正ではなく,知財専門職としてユーザに貢献するために必要な「資質」を担保する上で,試験制度は如何にあるべきかの観点から試験制度を抜本的に見直し,これを実現させます。

 

○啓発活動,支援活動

 弁理士の自助努力を促す一方で,その成果として弁理士が提供する価値に対して産業界等から適正な評価が獲得できる啓発活動を展開します。サービスの内容の如何を問わず,安ければ安いほど良いといったデフレ指向の評価しか得られなければ,品質を犠牲にした安易な値引き競争を誘発し,知財制度や弁理士制度は急速に疲弊し,いずれは破綻します。これは我が国にとって決して望ましい姿ではありません。ユーザからみて理に適ったサービスを提供した弁理士が,それに見合った適正な評価を得られる仕組みが構築されるよう産業界等と積極的に意見交換し,弁理士がやり甲斐を感じかつユーザの納得感も高められる制度の実現を目指します。

 また,支援・啓発活動に関する支部の自治を強化し,地域密着型の活動の拡大を図ります。

 さらに,児童,生徒,学生向けの知財教育プログラムについては,知財学会,大学,高専といった外部の教育関係機関と連繋した共同開発を促進し,教育現場の実情,児童心理学の観点を踏まえた費用対効果の高いプログラムを提供し,その実施に協力する体制を構築します。

 

○役員制度の見直し

 役員制度を見直してシンプルな形に作り直します。

 現行役員制度は,日本弁理士会の全国支部化が具体的に動き出した2006年度(平成18 年度)から実行に移されていますが,常議員会と執行役員会との関係,正副会長と執行理事の権限と執行役員会における議決権との関係等,やや複雑で制度上の矛盾も指摘され,ここ数年来,見直しが議論されています。しかし,未だにその結論を出すには至っていません。

 そこで,今年度はこの役員制度の問題に決着を付け,常議員会と執行役員会,さらには正副会長と執行理事との関係をシンプルなものに作り直し,より機動的で効率的な会務運営が図れるようにします。

 

○弁理士会組織の見直し

 縦割組織の弊害を排除し,組織の合理化及び活性化を図ります。

 *会長室の官房機能を強化する等の手段により,会務を横断的かつ継続的に把握して執行役員会をサポートする組織を設置し,会務活動の一体化,合理化を進めるとともに,執行役員会の日常的な事務処理負担を軽減して,執行役員会の司令塔的機能の強化を図ります。

 *執行役員会の意向に沿った広報活動を展開するため,対外的情報発信の要となる広報機能を会長室等のサポート組織に組み込み,戦略的広報活動を執行役員会が直接指揮する体制を整えます。

 

3.まとめ

 以上,平成25 年度に取り組むべき重点事業の一端を述べさせて頂きました。これらの事業を成し遂げて,次世代に引き継ぐシッカリとした礎を築きたいと願っています。会員の皆様のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。