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鳥取県と知財支援協定締結(2006年5月11日)

  現在、日本弁理士会は、6道県、すなわち、北海道、岩手県、福島県、栃木県、島根県、高知県と知財支援協定を締結しており、知的財産権の専門家として地方自治体の知財活動を支援しています。今回は、今年度最初の知財支援協定を鳥取県と締結することになりました。

 知財協定の締結に先立って、鳥取県庁の商工労働部を訪問し、山口部長、岡村次長、中山課長、佐々木副主幹と情報交換を行いました。鳥取県では、片山知事が鳥取県の経済活用に知財を利用することに熱心であり、今年の3月には、全国で初の知財条例が制定されています。この知財協定は、他の自治体とは異なり産学官協力に留まらず、金融機関と県民をも巻き込んで、知財をキーワードに鳥取県経済の活性化を目指すという画期的なものです。

 さらに、鳥取県では、サンヨーなどの液晶表示装置関連の企業の拠点があり、それらの企業を巻き込んでのクリスタル・コリドール構想、さらにサントリーなどの食品産業企業を巻き込んでのスマート・コリドール構想を展開していくとのことです。さらに、最近ではローソンと包括協定を締結し、鳥取県の産品の拡販を図る構想もあるとのことです。鳥取県では、従来の行政とは異なり、力のある企業、意欲のある企業を積極的に支えていくとのことであり、とても頼もしく感じました。

 片山県知事は、地方行政の長というよりは、大企業の敏腕経営者といった風情の方であり、従来の行政の長に対する考えを見直さなければならないようなリーダーでありました。

 片山県知事によれば、鳥取県の経済は、中小の下請け企業が中心に展開しており、収益性が低い点が問題であり、このような経済構造を打開するためには、知的創造活動を積極的に支援することが必然であるとのことです。

 特に、文化と技術という2つの柱を中心に展開する知的財産権の保全が重要であり、そのことを行政のみならず民間にも知らせるために知財条例を締結したのであり、それらの一連の流れの中で、本日の日本弁理士会との間で締結される知財協定も大きな意義を持つとのことです。

 谷会長も、片山県知事の見解に賛同されて、知的財産支援センターを中心に鳥取県の知財活動を知的財産権の専門家として支援していくことを約束しました。

 11時に知財協定の締結がなされました。その後、記者会見に移行し、谷会長、片山県知事の順番で、今回の知財協定の意義について、マスコミに対して説明がなされました。次いで、商工部の岡村次長から鳥取県の知財活動に対する説明がなされ、さらに、牛久支援センター長から日本弁理士会の支援活動についての説明がされました。今回の記者会見は盛況であり、NHKをはじめとするテレビ局、朝日新聞をはじめとする新聞社から多くの記者の参加があり、その関心の深さが推し量られました。

 これらマスコミの関心の深さを受けて、商工部の山口部長は、鳥取県の知財に関する30分程度の特番を企画するとの考えを示されました。鳥取県側から日本弁理士会に要請のあった支援内容は内容が濃く、われわれとしても対応に苦慮するところですが、行政やマスコミのあれだけの関心と意欲を示されれば、われわれとしてもやりがいがあるというものです。

  続いて、鳥取県商工労働部産業技術センターを訪問しました。産業技術センターでは、足森センター長より事業概要の説明を受けました。産業技術センターでは、自立型企業の育成推進を活動の柱としており、いくつかの成功例、たとえば印鑑材として利用される圧密化木材やランプシェードについての説明を受けました。また森山窓口責任者の手がけた製品の展示などもあり、今後の知財活動の成果が期待されます。

 続いて菌蕈研究所を訪問し、副研究所長から説明を受けました。この菌蕈研究所は、標本と分類の充実さでは日本最高のレベルを誇っているとのことでした。

 特に、椎茸の新種開発ではすぐれた業績を残しているが、最近では、中国産椎茸に押され、日本の椎茸産業は衰退しているようです。しかしながら、味や香りでは、日本産のものが中国産を圧倒しているとのことでした。

 続いて鳥取県知的所有権センターおよび発明協会鳥取支部を訪問し、発明協会の活動状況についての説明を受けました。何といっても、地方における知財活動は発明協会の地道な活動抜きでは考えられず、いつも脱帽させられます。

 最後に、鳥取大学を訪問し、能勢学長から鳥取大学の知財への取り組みについてのお話を伺いました。鳥取大学には知的財産センターが設立されており、鳥大知財ニュースなども発刊されており、大学を挙げての知財に対する積極的な取り組みが感じられました。

  今回締結された知財支援協定を受けて、5月31日の県職員向け研修を皮切りに、支援センターの協力のもとに10数回におよび鳥取セミナーが開催される予定です。鳥取県の知財活動は、これまでお世辞にも活発とは言いがたい状況でしたが、これを機に、知財先進県の仲間入りをしてもらいたいものです。

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