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平成19年度会長就任挨拶

就任のご挨拶

プロフェッショナルの真髄を極めよう!

会長
中島 淳
(なかじま じゅん)


 平成19年度の会長就任に際して,皆様にご挨拶申し上げます。

 今年度から,会長が2 年制になりますが,会長2 年制を踏まえ,おおよそ次のような対応を中心に施策を実行して参りたいと思います。弁理士法改正,弁理士制度の基盤充実,特許事務所の新体制,社会的要請,会務の効率向上と情報管理等への対応です。以下,各項目について詳細に述べさせて戴きます。

 昨年度の役員会及び関係者のご尽力により,弁理士法が改正されようとしています。弁理士登録前の実務修習制度,弁理士の資質向上を図る必修研修制度,弁理士業務の拡充など,弁理士のプロフェッショナル性をさらに確実に高めるための改正です。

 実務修習制度は,急増する試験合格者に所定の研修を義務付け,一刻も早くベテラン弁理士に近づいてもらおうとするものです。既存弁理士も実務家としては多方面で大活躍していますが,必修研修制度は知財関係の法律や実務の改定に対応するなど日々新しい知識などを習得しなければならない環境への対応です。

このような弁理士法改正は,まもなく国会上程が予定されていますので,特許庁はじめ関係各位と協力しながら,法案成立と政省令決定まで鋭意努力します。

弁理士法が改正された後は,改正法の趣旨に沿って,改正内容の確実な実施に向けた準備と関連事項の整備実行をします。実務修習制度や既存弁理士の研修は,多人数を対象とし,多大の時間を要しますので,研修事業への投資,研修内容の確立,講師の確保などについて研修所を通じて充分な対応をします。また,新人については,弁理士会での研修だけでなく特許事務所での研修機会を与えることのできるインターン制度の導入も試みます。

 平成12年の改正弁理士法などにより,弁理士の業務は本来業務だけでなく,一貫業務,周辺業務へと拡大されました。これらの知財の本来業務及び周辺業務は,唯一の知財職業資格専門家である弁理士が担うことによってのみ,高度で効率的な成果が得られると信じています。

 弁理士の本来業務については,さらに高度な領域を求め,周辺業務についてはさらに多くの弁理士が活躍できるように拡充しなくてはなりません。このためには,特許委員会などの専門委員会,研修所,及び知財ビジネスアカデミーを中核にして,さらには大学などの外部組織の支援も得て,総合アドバイザー型の弁理士を多数養成してまいります。

 また,これと同時に,クライアントや利用者の皆様にも,弁理士へこのような知財周辺業務を依頼してもらうような理解と広報活動が必要です。これらについて効率的な普及活動を進めてまいります。

 そのほか,今回の弁理士法改正で予定されている,特許事務所や弁理士のコンプライアンス向上,品位保持などへの対応も重要事項です。これに関連して,昨年度改正された弁理士報酬制度の例規改正についても,すべての会員に徹底されるような準備と対応をします。

 弁理士が所属する事務所の体制についても,新しい対応が迫られています。特許事務所においては,弁理士のコンプライアンス充実に伴い,クライアントへの説明責任の範囲,クライアントから受け取った情報をどのように処理するべきか,事務所ごとの弁理士報酬の取扱いなど弁理士の業務についての指針となる業務標準を創設し,普及する所存です。

 また,事務所においては,特許庁やクライアントへの弁理士による責任体制の確立を図ることも早急に対応すべき事項です。今回の弁理士法改正事項である,外国特許出願への標榜業務化についても,事務所において充実した責任体制をとれるよう,研修や事務所体制の確立をお願いしなくてはなりません。

 これらの背景を考えると,本年度は事務所への単なる情報提供ではなく,事務所経営の将来モデルを創設し,事務所経営者の会員に対し, 直接的なお願いと意見交換ができる機会を作る予定です。

 さらに弁理士会は特許事務所弁理士だけでなく,企業や公的機関で活躍している会員もいます。このような会員にとって,弁理士会という存在はどのような価値があるのか,さらにどのような存在でなければならないのか。このような意見を拝聴し今後の弁理士会の運営に生かします。

 政府の知財立国計画はイノベーション25 計画へと発展進化を遂げています。知財戦略推進事務局から発表される知財推進計画は,毎年新たな項目が追加され益々充実しており,その中で弁理士への要望や期待は年々増えています。知的創造サイクルの思想が全国津々浦々まで広がるように,引き続きキャラバン隊活動やタウンミーティングなど地域支援を進めます。これには,知財支援センター,全国各支部などの力をお借りして効率的な支援活動をします。

 また,審査迅速化などの行政活動支援,産学官連携への協力,中小・ベンチャーへの支援,国際的な権利取得制度への対応をはじめとする国際貢献など,関係諸団体と連携して多くの社会的要請への対応も着実に実施してまいります。

 日本弁理士会は会員のためにどのような対応をしなければならないのかを真剣に考えなくてはなりません。例規で規定されている役目の他に,会員への迅速な情報提供や,会員個人ではできない事柄についての対応など沢山の課題があります。一方では,会員数は増えても,会務活動へ参加する会員数は増えておらず,適切な会務活動を維持するために,参加向上策も講じる必要があります。環境変化により継続対応できなくなる共済制度についても会員の意見を聞いて今後の方向を決定します。

 本年度は,役員会及び弁理士会事務局の透明性をさらに高め,迅速な情報提供に努めます。弁理士数増や対外的関係の広がりに伴い,弁理士会事務局組織も拡大しています。機械化によるデータベースの充実などにより,弁理士会事務局の効率的運営や危機管理体制の充実に努めます。会員への業務支援データベースの益々の充実を図り会員の業務効率を向上します。

 今年度から,会長の任期は2年となりました。このため,今までと異なり,長期スパンでの計画が設計できます。弁理士会の会務は,公益的性質が強い関係上,すべての活動が予算成立により成り立っており,これが単年度の活動計画では限定的なものとなっていました。これからは初年度で下準備をし,2年目からはその上に立って,本格的な活動が出来る体制です。

 具体的には,弁理士法改正で導入される新人の実務修習や会員の必修研修においても,初年度が企画立案,次年度での本格的実行を目指します。弁理士の周辺業務の充実についても,初年度は周辺業務充実のための研究や企画,次年度で本格的な会員研修の実施ができます。これらの施策の実行にあたり,2年制のメリットを生かし,予算配分を2 年に分けることによって,その実行が現実的になります。2 年任期の利点を充分に活用して効率のよい施策実施に努めますが,詳細については定期総会にてご説明する所存です。

 このように弁理士や弁理士会が対応しなくてはならない事柄は数多くあります。さらに社会の期待は我々が進めている事項よりも大きいのが現実です。弁理士の業務が,極めて高度で広範囲な内容であることは当然として,そのほかに社会の期待に充分に応えてこそ知財のプロフェッショナルです。弁理士全員が,このようなプロフェッショナルの真髄を極めることができるよう,皆様と一緒に頑張りたいと存じますので,何とぞ,ご協力,ご支援,ご指導をよろしくお願いします。

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