2004年12月14日

記者懇談会・議事録(2004年12月)

平成16年度第6回記者懇談会

日 時:平成16年12月14日(火)午後1時から2時
場 所:日本弁理士会3階 会議室 テーマ: 1)工業所有権の審査・登録の民間解放について
2)知的財産タウンミーティングの開催について

出席者:記者10名
      日本弁理士会
      知的財産支援センター
        副会長 吉田芳春
        知財本部 副委員長 森 哲也
        広報センター センター長 鴨田哲彰
        広報センター 副センター長 大石治仁
        広報センター 委員 石井豪

内容

(1)開会の開催及び懇談会の進行説明(大石副センター長)

(2)知的財産タウンミーティングの開催に関する説明(吉田芳春日本弁理士会副会長)
  配布資料:「知的財産タウンミーティングパンフレット」
  第1事業部について次の紹介がされた。
  知的財産タウンミーティングが昨年度より実施されている。昨年度は全国2ヶ所(鹿児島、福岡)において行われた。今年度は開催場所を全国4ヶ所に増やし、開催予定。具体的には、2005年1月14日、函館にて、2005年1月27日、広島にて、2005年2月9日、福島にて、それぞれ開催予定となっている。なお、当初、新潟においても開催の予定であったが、中部地震の影響により現在のところ開催は未定という状況である。
  知的財産タウンミーティングは、弁理士個人個人ではなく、日本弁理士会と地方自治体という組織同士の結びつきにより、知的財産制度を利用した地域振興、地域活性を強力に推進していくことを主旨として開催するものである。

(3)工業所有権の審査・登録の民間開放に関する説明
  (吉田芳春日本弁理士会副会長、森哲也日本弁理士政治連盟会長)
  配布資料: 「特許審査の民間への開放に対する意見」
  「工業所有権登録の民間への開放に対する意見」
  「医療関連行為の特許保護の在り方についてのとりまとめ」等
  平成16年8月3日、及び、平成16年11月22日に、政府の規制改革・民間開放推進会議が、特許の審査、及び、工業所有権登録の民間への開放を提言している。これに対して、日本弁理士会は強く反対をしている。
  日本弁理士会が反対する第1の理由としては、特許の審査、工業所有権の審査・登録は国家がなすべき高度な産業政策である点が挙げられる。たとえば、医療行為や医薬などの医療技術に対して、どこまで権利を認めるか、どこまで特許で保護すべきか、というような判断は、国の高度な基本産業政策に関連するものであり、民間が行うべきものではない。したがって、特許の審査、工業所有権の審査・登録は、国民の意識、産業の状況等を参酌し、国家の産業政策を勘案した判断が可能な政府機関が行うべきものである。
  反対の第2の理由としては、特許の審査、工業所有権の審査・登録は高度な公権力の発動としてなされるべきものであるという点が挙げられる。特許や工業所有権の登録は、自由経済の中で独占排他権を付与するものである。独占排他権は、強力な対世的効力を有するものであり、たとえば、特許法では、特許権の侵害に対する民事上の救済として、差し止め請求等が認められる旨、規定されている。また、刑事上の救済として、特許権の侵害は刑事罰の対象となる旨が規定されている。このような強力な権利の付与は、高度な公権力の発動としてなされるべきものであり、民間が行うべきものではない。また、特許法では、裁判官に準じて審査官にも除斥・忌避の制度が規定されており、審査の独立性が担保されている。このような点からも特許の審査は裁判と同じように民間に適するものではないと考えられる。
  反対の第3の理由としては、特許の審査を国が行うことは国際条約上の責務となっているという点が挙げられる。日本は多くの条約を締結しているが、たとえば、パリ条約の第12条には「各同盟国は、工業所有権に関する特別の部局・・・(中略)・・・を設置することを約束する」旨が規定されている。また、特許協力条約(PCT)の第2条には、「国内官庁とは、特許を与える任務を有する締約国の政府の当局をいう。」旨が規定されている。日本以外の各国もこれらの規定に則って特許の審査を行っており、民間で特許の審査、工業所有権の審査・登録を行うのは条約違反になるとも考えられる。
なお、特許の審査においては、何と特許すべきか、発明が新しいか、進歩しているか、公序良俗に反しないか、公衆衛生を害する要員がないか等、非常に高度で公正な判断が必要とされる。さらに、先に述べた通り、これらは産業政策に直結した判断である。このような判断を競争原理に基づく民間が行うことは問題である。
  また、現在の審査の滞貨は、審査請求期間の短縮化による一時的なものと考えられる。今年度の法改正において、審査迅速化法が定められたため、審査の滞貨については、この審査迅速化法によっても緩和されるものと考えられる。また、日本、米国、欧州の三極への重複した出願に関して重複した審査が行われているという点も、審査滞貨の原因となっているが、インフラの整備や審査官交流派遣等の国際協力が取り組まれており、対応が図られている状況である。なお、特許の審査を民間に開放しても、審査が早くなるというものではない。

(4)質疑応答
主な質疑応答の内容は以下の通りである。
  (Q1) なぜ、このような話が出てくるのか?海外の団体等により圧力がかけられているなどの状況があるのか?
     (A1) 海外の団体等により圧力がかけられているという事実はない。また、国内においてもユーザー等は反対の意向を示している。あくまでも、政府の規制改革・民間開放推進会議の中で叫ばれているものである。
  (Q2) 民間への開放というが、どこまでの内容について開放されるのか具体的になっているのか?
  (A2) 工業所有権の審査、登録に関してとあるため、特許化すなわち権利化のための審査が含まれていると考えられているが、具体的に述べられているわけではない。
  (Q3) 重要な発明についてのみ審査官が審査を行い、周辺発明等については民間に審査を委ね、問題が生じた際に審判等により対応するという案は考えられないか?
  (A3) 発明が重要であるか否かの判断は困難であり、ユーザーの立場から考えれば総てが重要な発明に該当する。また、そのような審査は、紛争の増加につながり、審査の信頼性が損なわれていく怖れもある。

以 上