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<米国>カタログ中のプリンタの開示は本質的に複写機を開示するものではない

〈米国〉

カタログ中のプリンタの開示は本質的に複写機を開示するものでない

CAFCは、「新規なコンピュータレーザプリンタ」により作られた時計盤の広告を掲載したカタログの先行技術よって、カラー複写機を用いて多色の時計盤を作るコンピュータ化された方法が本質的に(inherently)開示するものでないと判示した(Trintec Industries Inc. v. Top-U.S.A. Corp., Fed. Cir., No. 01-1568, 7/2/02)。この判決において、裁判所は、複写機とプリンタとの違いは自明であるとしても、自明性は本質的な開示事項とは異なると認定した。

この事件で、まず下級裁判所は特許が無効であると認定した。Trintec Industries Inc.は、多色の時計文字盤を製造する方法の特許(USP 5,818,717)の譲受人である。この方法は、コンピュータ内で多色の文字盤を生成し、信号をカラーのプリンタまたは複写機に送り、シート材の上にその文字盤をプリントしてこれをカットし、計器に取付けるというものである。

Top-U.S.A. Corp.は、18年以上、パッドプリント、彫刻、シルクスクリーン又は写真の方法によって、カスタマイズした時計文字盤を製造してきた。Top社がカラーレーザプリンタの技術を使い始めると、Trintec社はこれを特許権侵害として起訴した。
オハイオ州南部地区の地方裁判所の首席判事Joseph P. Kinnearyは、717特許は無効であるとするTop社による略式判決の申し立てを認めた。地裁は、本発明は、「新規なコンピュータプリンタ」で作られた多色の時計の広告を掲載している「Swedaカタログ」によって実質的に開示されていたと判示した。
この地裁の判決に対して、Trintec社は控訴した。

CAFCは、まず、「単一の先行技術文献が、クレームで述べられている各々の限定のすべてを明白に又は実質的に記載していれば、その先行技術文献は特許されたクレームを開示している」とした。そして、CAFCは、In re Robertson, 169 F.3d 743, 49 USPQ2d 1949(Fed. Cir. 1999)を引用して、「本質的に認識されているというためには、不足している記述的な材料が、先行技術中に単に推定または可能性として存在するだけでなく、『必然的に存在』していることが要求される」と付け加えた。

Rader判事は、「問題となった本質的な開示は、『カラー複写機』や『複写機』に対する限定に言及しているクレーム3と8に関係しており」、また「地裁は、『カラー複写機(color photocopier)』という用語が『カラープリンタ(color printer)』を意味すると解釈した」と述べ、地裁の意見を引用して「地裁は、Sweda カタログがカラープリンタを本質的に開示していたと判断した」と述べた。この判断において、地裁は、上述の解釈に基づいて、「グラフィックアート産業の当業者ならば、カタログ中の『コンピュータレーザプリンタによって生成されるフルカラー表現』との記述には、カラープリント装置が必然的に存在していると認識するであろう」と理由付けをしている。

しかし、CAFCは、Swedaカタログにおけるカラープリンタの記述が本質的に複写機を開示していたとする地裁の結論を退けた。Rader判事は、「カラープリンタは、カラー複写機ではない」と述べた。詳しくは、以下の通りである。

「717特許の発明の詳細な説明は、『発明の主要な構成要素は、プリンタであって、望ましくは、カラー複写機である』と教示している。・・・(中略)・・・これと同時に、本件特許は『カラー複写機は、カラーのプリントをするだけではなく、コピーをするものである』ということも認識している。具体的に、発明の詳細な説明では『先に述べたタイプのようなカラー複写機による複写』が教示されている。・・・(中略)・・・Steven J. Bares博士による裁判所において明白な証言は、この点を強調している。博士による証言とは、すなわち『デジタルカラー複写機は、スキャナを通してデジタル情報に変換された画像がデジタルカラーレーザプリンタに送信されるように、互いに直接的に接続されたデジタルカラースキャナとデジタルカラープリンタと含んでいる。』というものである。したがって、クレーム構成を正確に解釈すると、『カラー複写機』は、対象をカラーでプリントしかつカラーで複写するという両方の能力を要求している。」

プリンタと複写機との違いは、極めて小さくて当業者に自明のことであるかもしれない。しかし、「自明性(obviousness)」は「本質的な開示(inherent anticipation)」とは異なる。新規性判断には厳格な同一性が要求されるが、このケースの場合、理性的な陪審員でもSwedaカタログが明白に又は本質的にカラー複写機を開示していると結論することはできない、と判断した。

〈判決文〉

http://pub.bna.com/ptcj/011568.htm

〈参考文献〉

BNA International Inc.

“Patent, Trademark & Copyright Journal”

‘Catalogue Disclosure of Printer Was Not Inherent in Disclosure of Photocopier’

(Page 216-217, Volume 64, Number 1580, July 12, 2002)