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<米国>”Step for” を伴わない方法クレーム限定は、その限定が行為を含まないことが示されなければ、35 USC112-6に基づくステップ・プ ラス・ファンクションの限定事項として解釈されない

〈米国〉

“Step for” を伴わない方法クレーム限定は、その限定が行為を含まないことが示されなければ、35 USC112-6に基づくステップ・プラス・ファンクションの限定事項として解釈されない

 CAFCは、非侵害判断の一部を覆し、方法クレームに35USC112-6の適用を否定した(Masco corp. v. United States Fed. Cir., No.01-5107, 8/28/02)。問題の方法クレームは、”Step for”に続いて行為を並べており、「transmitting a force」というクレームの文言は、§112-6の適用を外れる行為を説明するものであると認定した。このような限定にステップ・プラス・ファンクションクレームの解釈を適用することは、これらの方法クレームの保護の範囲を不明確なものとし、定着しているクレームの範囲に関する特許権者の予測を混乱させることになるであろうと裁判所は述べた。

原告Masco corp.は、電子式ダイアル組み合わせ錠に関し2つの特許(5,540,068及び5,778,711)を取得している。Mas-Hamilton Groupは、「X-07」という高セキュリティの電子式ダイアル組み合わせ錠を製造し、政府会計事務所に供給していた。Mascoは、「X-07」錠の使用は特許侵害にあたると主張し、損害賠償を求めて合衆国を提訴した。

連邦請求裁判所(Court of Claims)首席判事Edward J. Damichは、特許’068と’711のそれぞれのクレーム1に含まれるいくつかの限定に関する解釈を述べた。そのクレームは、電子式錠(注:原文はclock)を制御する方法が「comprising the steps of」で記述され、続いていくつかの要素が列記されている。列記された要素の1つは、所定位置にレバーを”駆動する(to drive)”ためにレバーとダイアルが接続された後、”レバーに(to the lever)”与える”力を伝達する(transmitting a force)”と規定されている。裁判所は、Mas-Hamilton Group V. LaGard Inc.,事件における親特許(5,307,656)の解釈に基づき、”to drive”の意味を”to push”であると解釈し、侵害被疑製品X-07のレバーが”引っ張られている(pushed)”いるとの結論し、政府は非侵害であるとの略式判決を下した。請求裁判所は、Mas-HamiltonIでの訴訟で十分かつ深く行われたとし、push/pull問題に関し、Mascoに再訴訟を認めることを拒絶した。

これに対しMasco は、CAFCに控訴した。

“drive”クレームの解釈

CAFCは、”drive”を”push”と解釈する根拠がないとするMascoの主張を却下した。判事Richard Linnは、証拠として、”to drive”はドイツ特許に基づき予想される拒絶を回避するために補正によって挿入された語句であるという履歴を指摘した。裁判所によれば、その補正は、本件特許の押す動作(pushing action)をドイツ特許で明らかにされた引張動作(pulling action)から異ならしめるためのものであった。

Step-Plus-Function

Mascoは、請求裁判所は特許’068特許’と’771特許’の第1クレームの方法における第4のステップに対し、§112-6の適用を誤っていると主張した。特に、裁判所が、クレーム1における”steps of ・・・ transmitting a force”という句を、行為ではなく、機能として解釈している点が誤りであると主張した。政府側は、その句は行為として解釈するのはあまりにも漠然としていると反論した。

CAFCは、Mascoの主張を認めた。Richard Linn判事は、§112-6は、ミーンズ・プラス・ファンクションと同様、ステップ・プラス・ファンクションにも適用されるとの意見を示した。”means”という語句を使えば、その法律の適用が推定されると同様に、方法クレームにおいて、”step for”という語句を使えば、§112-6を行使させたい特許出願人の意図を意味するものだ、とも付け加えた。しかし、出願人がstep forを使用しても、§112-6が関係するのは、ステップ・プラス・ファンクションが行為を伴わないで記述されたときのみであると判事Linnは述べている。

この事件ではどちらの特許も”step for”の記述はなく、その代わりに”step of”が使用されていると裁判所は指摘した。従って、判事Linnによれば、これらの限定がステップ・プラス・ファンクション形式にあるとする推定は働かない。

請求裁判所は、何らかの行為を説明していれば、限定がステップ・プラス・ファンクション形式ではないとする意見を維持した。その意見によれば、”function”は、その要素が何を実現するかであり、”act”はその機能がどのように実現されるかである。

請求裁判所は、”transmitting”は行為ではなく、むしろ機能であったとしている。これは、単に”transmitting”というだけでは、力がどのように伝達されるかが説明されていないことによる。裁判所は、その限定は行為を伴わない機能を表し、従って、ステップ・プラス・ファンクション限定であるとの意見を維持した。

CAFCはこれに同意しなかった。特許出願者は、”step for”を使用しており、§112-6を思い出させたい意図を示すものではないと主張した。このような場合において、そのクレーム限定が、行為として解釈されるものを何も含まないことの説明が無いのであれば、裁判所はクレーム限定の範囲を制限するために§112-6に頼るべきではないと述べた。

判事Linnは次のように説明した。

この事件のように、”steps of”句に続いて主張される方法を構成する行為を列記することで、方法クレームが記述されることが多い。こうした状況において、§112-6を適用すると、これらの方法クレームの権利範囲を不確かなものとし、現在すでに定着しているクレームの権利範囲に関する特許権者の予測を混乱させることになるであろう。

「裁判所は、特許の世界で常識化された予測を混乱させる変更を採用する前には慎重でなければならない」。従って、裁判所は、”step for”を含まない方法クレームに関しては、限定が行為を含まないことの説明が無いのであれば、クレームの限定をステップ・プラス・ファンクション限定と解釈しない態度をとっている。この事件では、”transmitting a force”限定の問題になっている機能は、レバーをカムに対し動かすことである。機械辞典や通常の辞書の定義を引用し、裁判所は、transmittingは、”transmitting a force”限定の機能がどのように実現されるかを説明する行為であるとの結論を下した。
裁判所は、限定が、§112-6に基づく解釈に関するステップ・プラス・ファンクション限定として記述されているとの請求裁判所による判決を取り消した。

No Issue Preclusion

最終的に、CAFCは請求裁判所が、X-07錠のレバーが押されるか、引っ張られるかという疑問及び、押すことが均等物であるかどうかという疑問に対する争点除外を行なった誤りがあるという、Mascoの主張に同意した。

判事Linnは、Mas-HamiltonIにおいては、X-07錠のレバーが実質的に異なる方法でカムに引っ張られ、X-07はソレノイドもしくはその均等物を使用していないという異なった結論が出た。これらの結論のどれか1つでもあれば、非侵害の判決を支持するのに十分であったであろうと説明している。さらに、Mas-Hamilton IIでは、レバーがカムに引っ張られるという結論に基づかず、その代わりにX-07がソレノイドではなくステッパモータを使ったとする認定に関しては、地方裁判所が明らかに間違いを犯していないという意見を維持した。

Mas-Hamilton IIにおいては、Push/pull問題にけりがついていないので、先例によって、X-07のレバーが引っ張られるか否かという点と、押すことと引っ張ることが均等か否かという問題について、Mascoは再訴訟することができると判示され、従ってPush/pull侵害問題は、下級裁判所に差し戻された。
連邦請求裁判所の判決は、一部維持され、一部取り消され、差し戻された。

〈判決文〉

http://www.ipo.org/2002/IPcourts/Masco_v_US.htm

〈参考文献〉

BNA International Inc.

“Patent, Trademark & Copyright Journal”

‘Method Claim Without “Step For” Term Requires Proof of No Act for §112-6’

(Page 417-419, Volume 64, Number 1588, September 13, 2002)