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<米国>類似クレームへの拒絶の非開示は特許を無効にする可能性がある

〈米国〉

類似クレームへの拒絶の非開示は特許を無効にする可能性がある

〈概要〉

 5月23日に行われた連邦巡回裁判所によると(Dayco Products Inc. v. Total Containment Inc. Fed. Cir., No. 02-1497, 5/23/03)、異なる審査官に対して、主張している特許クレームと本質的に類似の同時係属出願におけるクレームへの拒絶の開示を怠ると、強制力を持たない特許を生み出す不衡平行為が認定される。

 連邦巡回裁判所は、類似のクレームを調査するもう一人の審査官による相反する決定がAkron Polymer Container Corp.対Exxel Container Inc.の重要性判断基準テストおよび規則56の要件を満たすと裁決するが、地方裁判所の不施行および無効の略式判決を無効にした。これは、地方裁判所が詐欺的意図を検討していなかったためである。

事件の背景

 Daycoは、ホースおよび連結アセンブリに関する特許を5つ(5,129,686; 5,199,752; 5,297,822; 5,380,050; 5,486,023)所有しており、それらは地下ガス封じ込めシステムを使用する点において互いに関連している。Daycoは、特許権を侵害しているとしてTotal Containment Inc.(TCI)を訴え、TCIは特許権は無効であり、これは不衡平行為だとし、また、特許侵害は存在しないとして反訴した。これに対して、ミズーリ州西部米国地方裁判所の上級裁判官Scott O. Wright氏は、TCIに対して特許侵害は存在しないという略式の判決を下した。だが、連邦裁判所は’686特許に関しては、この判決を支持し、他の特許に関しては判決を取り消し、案件を下級裁判所に差し戻した。これは、請求された連結アセンブリの様々な要素に対する地方裁判所の主張の構成に過失が発見されたからである(258 F.3d 1317, 59 USPQ2d 1489)。

  係争中の特許は、1989年9月15日提出の出願(’161出願)に対する一連の継続出願を通じて優先権を主張し、特許(5,037,143)として発行された。Daycoは、既に破棄になった当初の優先権1992年12月18日を有する類似技術に直接係る上述した出願とは異なるファミリー出願(196出願)の譲受人でもある。

 ‘196のファミリー出願および係争中の特許の基となる出願が、二人の異なる審査官、NicholsonとArola、それぞれの審査に委ねられた。Nicholsonは、係争中の特許の基となる出願であることを認識していたがが、Arolaは196ファミリー出願のクレームが、係争中の特許のクレームと同一であり、Wilson特許を超えて特許性がないとして拒絶されていた事を知らなかった。

 差し戻し請求に対して地方裁判所は、Daycoが意図的に196出願に関する重要な先行技術および情報を、即ち、Wilson特許の開示およびWilsonに基づいた本質的に類似の196クレームへの拒絶の開示を、怠ったという不衡平行為を犯したと主張するTCIの見解に同意した。それに対し、Daycoは上訴した。

’196出願は、“判断に影響を及ぼす重要な情報”であった

 地方裁判所は、同一の代理人が出願と係争中の特許との両方に従事したが、審査官Arolaへ196出願の開示をしそこなっていると示し、196出願係属において一部強制力を失う判決を審査官Nicholsonに下した。

 連邦裁判所判事Timothy Dykは、類似の主題だが特許性がある明瞭なクレームが存在する係属中の異なる出願を有する発明者は、審査官に対してその各出願を開示しなければならないと示した。(自明型の二重特許という司法的に制定された原理In re Lonardo, 119 F.3d 960,43 USPQ2d 1262(Fed. Cir. 1997)(54 PTCJ 215, 7/17/97))

 ‘196出願と関連した特許のその特許期間の一部を放棄することにより、Daycoは196出願の係属に関する情報が、判事Dykが関連付けたように、不衡平行為発見の根拠にはならないと主張したが、それに対し判事は以下のように詳述した。

 係争中の特許の特許期間は、196ファミリーにおける出願を考慮して、ターミナルディスクレーマーを提出することにより更なる短縮ができなかった(係争中の特許の期間が初期の143特許の期間に限定されていたので)と示すDaycoの主張が正しい一方で、特許期間の短縮は、ターミナルディスクレーマーにより二重特許の拒絶を克服するただ1つの結果ではない。ターミナルディスクレーマーを使用して二重特許の拒絶を克服するために、出願人は、“出願に付与される如何なる特許の規定は、一般に出願もしくは拒絶の根拠を形成した特許に従った前述特許が有するその期間の間のみ、実施するべきである”とディスクレーマーの中に書き記さなければならない。したがって、Arolaへの196出願の開示は、係争中の特許として発行された出願の二重特許の拒絶を導くことになるだろう、また、係争中の特許が196ファミリーから発行した特許に“一般に所有されていた”限り、係争中の特許を要求するディクレーマーは実施可能であった。審査官Arolaへの196出願の開示を怠った為に、196ファミリーに関して一般所有者制限に対応していない特許を特許権者は受領した。したがって、196出願の係属は判断に影響を及ぼす重要な情報であった。

詐欺的意図が見られない

 上訴裁判所は、196出願が不衡平行為の認定に必要な重要性の判断基準レベルを満たしている一方で、TCIには詐欺的意図を示す判断基準が認定できない、したがって、詐欺的意図の判断基準の要求を満たす196出願の存在を審査官Arolaへ通知し損なったという地方裁判所の略式判決には根拠がないと結論を下した。

Wilson特許

 地方裁判所は、Daycoが、その代理人が判決に影響を及ぼす重要な情報であるWilson特許を認識していたにも係わらず、意図的にWilson特許を審査官に提出しなかった点が詐欺的意図の認定に値すると示した。だが連邦裁判所は、この地方裁判所の略式の判決に対して「審査官が重要な情報となるWilson引例を見出したという単なる事実は有益ではあるが、事件の方向性を決定付けるものではない。」と示した。

 また、不衡平行為の認定に関して、上訴裁判所は、不衡平行為とは故意に差し控えたことではなく、詐欺的意図をさすと強調し、引例を差し控えたという決定からは、単純には、推断できないと付け加えた。したがって、Wilson引例を提出しなかったことが不衡平行為を立証できるような根拠にはならないと示した。

無効、許可されないクレームの分類

 連邦裁判所判事Dykは、係争中の特許を先行する引例は存在しなかったと示唆する専門家の証言を考慮することを地方裁判所が拒否していたので、この地方裁判所が下した無効の略式判決を保留する判決を下した。

 上訴裁判所は、また、地方裁判所が個々の論拠に基づいたクレームの正当性の言及を行わなかったことは間違いであったと示し、その正当性の略式判決の付与を保留にした。

 したがって、判決は無効になり、本件は、侵害問題の審理のため地方裁判所に差し戻された。また、地方裁判所に、重要な新規の証拠が先行する発明の問題もしくは不衡平行為に関する他の問題に対して審理を必要とするかどうか決定するよう命令した。

出典

 BNA International Inc. “Patent, Trademark & Copyright Journal”, ‘Nondisclosure of Similar Claims’ Refection May Void Patents’, Page 142-143, Volume 66, Number 1624, May 30, 2003

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