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<米国>CAFC判決:継続出願の範囲は繰越した実施形態に限定されない

〈米国〉

CAFC判決:継続出願の範囲は繰越した実施形態に限定されない

〈概要〉

 一部継続出願の範囲は、続いておこる特許出願に繰越した好ましい実施形態に限定されないと連邦巡回裁判所が8月12日に判決を下した(Cordis Corp. v. Medtronic AVE Inc., Fed. Cir., No. 02-1457, 8/12/03)。

 Johnson and Johnsonに対して陪審員が下した271ミリオンドルの賠償金の判決を覆す侵害なしとする判決を破棄し、下級裁判所へ差し戻すことで、裁判所は単にワイヤーメッシュなしの動脈ステンツに関する実施形態が親出願から繰越されていないからといって、動脈ステンツに関する特許がワイヤーメッシュなしの動脈ステンツに限定されることはないと判決した。被告の特許に曲がったワイヤーステンツを譲渡する言い回しを見出さずに、連邦裁判所は侵害なしの判決を取り消したが、特許法35USC§112の記述要求に基づいた下級裁判所の妥当な判決を支持した。

動脈ステンツ

 Cordis Corp.とJohnson and Johnsonは、動脈血管に対して拡張し、血流を改善する為に動脈を開いた状態で維持する冠状ステンツに関する特許(4,739,762と5,195,984)を保持している。先行技術のステンツは拡張した直径を予め定めていたので、その直径が小さ過ぎる場合は望ましい位置から拡散し、大き過ぎる場合は動脈を破裂させる。762出願はその親出願(特許番号4,733,665)の一部継続出願として提出された。762と984特許が有している全クレームは“本質的に一定の厚さを有し、複数の溝を形成する壁表面”を列挙している。

 Cordisは、特許侵害でMedtronic AVE Inc. 及びその他の企業(AVE)を訴えた。

 陪審員は、シヌソイドワイヤーリングを形成する溝を有するAVEのステンツが等価主義に基づいて主張されているクレームを侵害しているとし、Cordisに賠償金271ミリオンドルを支払うよう命じた。しかしながら、デラウェア州米国地方裁判所裁判長Sue L. Robinsonは、CordisがAVEのステンツが“plurality of slots formed therein”及び“substantially uniform thickness”の限定と同等であると主張することを禁じ、無効に関する法的判断を否定し、“substantially uniform thickness”の限定に関する文字通りの侵害に関して条件付の新規の公判をAVEに対して行うという法的判断を下した。

 Cordisは上訴し、AVEは反訴した。

クレームの範囲は、(親出願が)保持していた実施形態に限定されない。

 文字通り侵害のない簡略な判決を下す際に、地方裁判所は“slots formed therein”が先在する壁表面から材料を取り除くことにより製造された溝を必要とすると裁決した。連邦巡回裁判所はこの解釈を棄却した。溝は、材料の除去以外の手段によって、例えば、壁に組み込まれた開口を有する壁を構築する手段により壁表面に“formed”することができる、また“slots formed therein”は製造方法ではなく商品の物理的特性を示すと判事William C. Brysonは言及した。

 地方裁判所が“preferably, tubular member” を言及する762特許に対する判決を根拠とする一方で、762及び984特許の明細書は先在する壁表面から材料を除去することにより生成した開口部としての“slots formed therein”を明確にしていないと連邦裁判所は強調し、用語preferablyの使用は、文体が全体としての発明ではなく、好ましい実施形態を説明することが明らかであると判事は指摘した。

 裁判所は、特許権者は665の親出願から762特許の記述へ実施形態を開示し損ねているので、係争中の特許がワイヤーメッシュの実施形態をカバーできなかったと確信していないと示し、判事は以下のように詳述した。

 クレームを狭めることになるのでこの根拠を拒絶する。ワイヤーベントステンツを手放す如何なる文体も、特許は持ち合わせていないし、665特許の図1Aを762明細書の実施形態として含ませないことに特許権者が決定したという事実は、特許権者が曲がったワイヤーで構成した如何なるステンツも主張していなかったということを示唆しているわけではない。また、特許権者は、実施形態がCIPに付け加えられた限定を満たさないので、親出願からCIP出願へ特定の実施形態を繰越さないと選択することも可能である。しかしながら、この決定はCIPの範囲を繰越した好ましい実施形態に限定することにはならない。したがって、ステンツを形成する為にワイヤーが一部重複したワイヤーメッシュの実施形態を包含し損ねていることを、如何なる形式においてもワイヤーを曲げることにより生成される全ての実施形態を排除するようなクレームの構成を制限するべきだとするAVEの主張を拒絶する。

 加えて、訴訟手続の間にWiktor特許を特徴付ける984特許の発明者の陳述書は複数の合理的な解釈をすることができるが、溝を形成する為材料が取り除かれる先在する壁表面が不足している全ステンツを放棄することが明白でないし、曲がったワイヤーで作成したステンツを明確に放棄していない。同様に、762特許手続において“slots formed therein”の制限された解釈を支持するものはない。

 地方裁判所が762及び984特許におけるこの制限の解釈を誤ったと考え、連邦巡回裁判所はこの制限に対する事実無根な侵害の略式判決を棄却し、またその制限に基づいた同等の決定を棄却した。

記述の必要条件は満たされた

 反訴において、AVEは地方裁判所が、762特許が規則35§112の記述必要条件を満たしていないため無効であるとする陪審員の評決を覆すことを拒否したのは間違いであったと論じ、記述は完璧な深さを有する溝と半分の深さしかない溝との両方を可能にする用語“plurality of slots”の解釈のみを支持すると主張したが、地方裁判所の解釈は後者(半分の深さしかない溝)のみを可能にするというものだった。(Gentry Gallery Inc. v. Berkline Corp., 134 F.3d 1473, 45 USPQ2d 1498)

 判事Brysonはこの反訴に対し同意を示さず、クレームが溝の整頓か混合かを制限しないので、用語“plurality of slots”は多様な溝を意味し、溝の様式を意味するものではなくGentry Galleryとは識別できると示した。

 また、陪審員の有効性に関する評決が実質的な証拠に裏づけされたことに加え、AVEは明確に有罪を証明できるような証拠によって無効性を証明することができなかった為、裁判所は無効判決を保持せず、法律問題としての判決の否認を主張した。

 しかしながら、地方裁判所の侵害なしとする判決は覆され、この案件は下級裁判所に差し戻された。

文責 矢野壽一郎

出典

 BNA International Inc., ” Patent, Trademark & Copyright Journal”, ‘Scope of Continuation Application Is Not Limited to Embodiment Carried Forward‘, Page 480-481, Volume 66, Number 1635, August 22, 2003

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