著作権法(平成26年4月25日成立)

著作権法の一部を改正する法律案の解説

平成26年4月25日成立

1 出版社等にも電子書籍の海賊版の差止請求権が認められるようになります

~電子書籍に対応した出版権の整備(第79条、第80条、第81条、第84条等)~


出版物の流通は、これまで、主に紙媒体の出版物を頒布する出版形態で構成されていました。しかし近年、新しい出版物の流通形態として、CD-ROM書籍など電磁的記録媒体による頒布や、インターネット配信を利用した電子書籍等が広がりを見せています。

その一方で、スキャン装置等の普及により、容易に紙媒体の情報をデジダル化することができるようになったため、紙媒体の書籍の内容を複製(コピー)して、電子ファイル化し、これを権利者に無断でインターネットにアップロードしたり、CD-ROM化して販売したりといった、いわゆる電子的な海賊版による違法行為が増加しています。

このような状況に対しては、従来の出版権の規定では、紙媒体の出版物のみが対象となっているため、CD-ROM書籍やインターネットを利用した電子書籍の海賊版に対して十分な対応ができていません。

また、現在の著作権制度では、原則として、著作権者自らが、海賊版の出所を突き止め、海賊版が出回るのを差し止めるしかないのですが、多額の費用がかかることもあり、一個人である著作権者だけでは事実上対応は困難です。こうした背景により、著作権者のみならず、電子書籍を出版する出版社等も海賊版対策を講ずる必要性が指摘されてきました。

そこで、今回の法改正では、出版権で規定される複製に、電磁的記録として複製する行為を含めるとともに、インターネットでの送信(公衆送信)も対象に含めることとなり、CD-ROM書籍やインターネット配信による電子書籍の出版を行う者(出版社等)に対しても出版権の設定をできるようになります。また、これにより出版社等が自ら電子的な海賊版の公衆送信を差止める請求(差止請求)や公衆送信によって被った損害の賠償請求(損害賠償請求)を行えるようになるため、効果的な海賊版対策が期待されます。

<改正前の出版権と改正後の出版権(拡張された電子書籍に関わる箇所)との比較>

改正前の出版権 改正後の出版権 (拡張された電子書籍に関わる箇所
権利の主体 (第79条) 紙媒体書籍の出版を引き受ける者 電子書籍の出版を引き受ける者
権利の客体 紙媒体の出版物 ex. 書籍、雑誌等 電子媒体の出版物 ex. CD-ROM書籍、電子書籍等
権利の内容 (第80条1項) 複製する権利 電磁的記録として複製する権利 公衆送信する権利
再許諾 (第80条3項) 不可 一定条件のもと可能
出版者の義務 (第81条) 紙媒体書籍を出版する義務 継続して紙媒体書籍を出版する義務 電子書籍を出版する義務 継続して電子書籍を出版する義務
存続期間 (第83条) 契約で設定もしくは3年 契約で設定もしくは3年
消滅請求 (第84条) 紙媒体書籍を出版する義務等に違反した場合に請求可能 電子書籍を出版する義務等に違反した場合に請求可能

〔施行期日〕 平成27年1月1日


2 著作権法の保護対象に、「視聴覚的実演に関する北京条約」の締結国の国民等の実演が加わります(第7条)

現在、我が国は「視聴覚的実演に関する北京条約」注1)への加盟を目指しています。本条約を締結するには、国内の法律制度の中において、本条約の適用を確保するための措置を講じる必要があります。そこで、著作権法の保護を受ける実演(第7条)に、「視聴覚的実演に関する北京条約の締約国の国民等が行う実演」を明記し、本条約の規定と国内法の整合性を図ることとしました。


〔施行期日〕  視聴覚的実演条約が我が国について効力を生ずる日


注1:視聴覚的実演に関する北京条約:実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)で保護されている音の実演家(歌手や演奏家など)と同様に、視覚的実演家(俳優や舞踏家など)の実演にも著作隣接権を認めて保護を図ることを目的として2012年6月26日に中華人民共和国の北京で採択された国際条約。我が国では現在この条約を早期に締結できるように関係省庁で検討中。