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記者懇談会・議事録(2011年11月)

平成23年度 第6回記者会見報告書

日 時: 平成23年11月25日(金)13:30〜14:30
場 所: 弁理士会館2階 2−AB会議室
テーマ: ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定(仮称))について
出席者: 日本弁理士会(4名)
副  会  長        井澤  幹
産業競争力推進委員会 委員長 松井 孝夫(スピーカー)
広報センター 副センター長  鈴木 一永(司会)
広報センター 第2事業    田村 拓也(議事録)

議事

1.開会の挨拶(鈴木一永 広報センター 副センター長)
2.ACTAについて(松井孝夫 産業競争力推進委員会 委員長)
(1)日本弁理士会声明について
・ACTA「偽造品の取引の防止に関する協定」に関し、10月1日に東京で署名式が開催され、日本をはじめ8カ国が署名した。日本弁理士会は、ホームページ上で以下の歓迎の声明を発表した。
『日本弁理士会は、模倣品・海賊版の拡散が、企業等による知的財産の創造サイクルを減退させるとともに、消費者の健康や安全を脅かすものとして、世界の経済社会に対し深刻な脅威となっているとの問題意識から、世界規模での模倣品・海賊版の拡散を防止する新たな国際的枠組みとして、本協定の成立に向けた交渉参加国の取り組みを全面的に支持してまいりました。今般交渉参加国の努力が結実し本協定の署名に至ったことは、知的財産権を保護し、模倣品・海賊版の国際的な流通を防止するための大きな前進であり、日本弁理士会として心より歓迎するものであります。
 日本弁理士会と致しましては、今後、世界各国における模倣品・海賊版の拡散防止のための枠組みがなお一層強化されるべく、本協定の更なる参加国拡大に向けた日本政府の努力を全面的に支持するとともに、当会自身としても、交流のある諸外国の機関や団体を通じて本協定の理念を各国の知財実務家へ広く普及させることにより、各国の本協定への参加意識の高揚に向け積極的に協力する所存です。』


(2)ACTAの概要
ACTAは、特に、以下の三点に特徴がある。
1)模倣品・海賊版の防止に注目した初めての国際条約である点
・ACTAは、模倣品・海賊版の防止に注目して、初めて成立した国際条約である。当初、「模倣品・海賊版拡散防止条約」の名称で締結に向けて協議されてきたが、留保規定を除けば、模倣品・海賊版に限らず、一応の対象をTRIPS協定で規定する知的財産として定義される分野の保護にまで広がっているので、仮りの名称は「偽造品の取引の防止に関する協定」に変更されている。
・模造品問題は南北問題と直結するため、ACTAは、いわゆる多数国の合意により締結される条約(マルチ型)での合意が難しく、複数少数国の参画・合意から拡大(プルリ型)を狙って協議され締結された点に特徴がある。現時点で署名国は8つの国(日本、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、モロッコ、シンガポール)だが、署名予定の3ヵ国(EU、スイス、メキシコ)を合わせて11カ国から拡大を図ることになる。
・ACTAは、 “何を保護するのか”の時代から、 “どのように保護していくのか”の時代への変化を象徴している。TRIPS協定におけるエンフォースメントの規定がさらに強化され、模倣品・海賊版で問題となる21世紀におけるデジタル製品の知財侵害の態様(偽造品の拡散の特性)を考慮した規定を有する点などに特徴がある。

2)日本が提唱し、日本が主導して成立した国際条約である点
・ACTAは、日本が最初に提案し、この提案にアメリカが賛同する形で協議が開始され、常に日本が主導して締結に至った条約である。日本弁理士会は、その都度意見を述べ、全面的な協力を行なってきた。
知的財産分野の条約について、提案から締結まで常に日本が成立に向けて主導したという意義を、非常に高く評価し、歓迎するものである。

3)TRIPS協定プラスの視点で成立した国際条約である点
・ACTAは、TRIPS協定で規定された水準を上回るレベルで、各国に義務を課すものである。TRIPS協定のエンフォースメント規定(第3部「知的所有権の行使」)を更に具体化すると共に、21世紀における知財侵害の態様に考慮されている。例えば、「デジタル環境下における知的財産権の行使」(ACTA ChapterU Section5)では、インターネット時代に沿った模倣品の拡散の問題を扱う等、TRIPS協定の時代では考慮していなかった態様までをも射程にした条約といえる。
・「デジタル環境下における知的財産権の行使」に関し、@デジタル環境下における著作権侵害についての権利行使、A電子商取引などにおけるオンラインサービスプロバイダに情報を開示する命令する権限の当局への付与、B技術的制限手段の回避に対する法的措置、C著作物等権利管理情報の保護措置−等が盛り込まれている。
・また、TRIPS協定が更に具体化されている点として、@「損害賠償請求」に関し、損害の算定の基準に言及していること、著作権・商標権等に具体化されていること等を挙げることができる。A「情報の開示」に関し、司法当局が侵害者(侵害と認められる者も含む)に対し、証拠収集を目的として情報の開示を求めることが義務づけられていること等を挙げることができる。
・「国境措置」(ACTA ChapterU Section3)では、商業的小口貨物(個人の輸出入)を規制の対象とする義務、輸入のみならず輸出も対象にした拡散の防止義務、権利者申立がなくても被疑侵害物件の差止又は解放の権限を有するという水際権限の強化−等が定められている。
・「刑事上の執行」(ACTA ChapterU Section4)では、不正な商標の使用に刑事罰を適用すること、著作権侵害について刑事罰を適用すること等を義務付け、模倣品・海賊版および関連品の没収・廃棄の権限等も盛り込まれている。

(3)日本弁理士会が果たす役割
・ACTAを実効あらしめるためには、@ACTAの参加国を増やす、A何らかの形で条約の内容をさらに充実させることが必要となる。これは日本政府の行なっていくことであるが、日本弁理士会もこの双方につき、様々な形で、日本政府を積極的に協力・支援していく所存である。
・例えば、日本弁理士会は交流のある実務家団体・他国機関との交流等を通じて、間接的な形ではあるが、ACTAへの参画意識を民間側から喚起していくように努める。会員個別の国際的な活動においても、ACTAに関する積極的な働きかけを行うように努める所存である。


3.質疑応答
Q:いつ頃発効され、それまでにどのような手続が必要か――。
  ・ACTAは、少なくとも署名した8カ国が各国において批准し、寄託国である日本に6番目に批准書が届いた寄託日から30日後に発効される。その具体的年月は、署名した国の国会を経る等の手続が必要であるので明確でないが、署名国数がそれを上回っているので近い将来であることは疑いのないところである。
Q:ACTAに中国が非加入であるが、参画するのか、また、その影響は――。
  ・ACTAの拡大、すなわち、模倣品の製造国・拡散国である中国を含めた新興国等がACTAに参画するようにする具体的な方策については、今後の課題である。この点、ACTAは、多数国の間で長い期間をかけて最終的合意を得るのではなく、国際的枠組み作りを先行させ、この枠組みへ参画する加盟国を拡大していくという体制(プルリ)を採用したことが評価されるべきである。
Q:ACTAによって中国での模倣品を規制することはできないのか――。
  ・ACTAは各国に義務を課す条約である。ACTAに加盟すれば、これに沿って各国が法を整備し、その法律に基づいて模倣品を取り締まることになる。中国は、現行の法制度で模倣品を取り締まっており、中国がACTAに加盟すれば、これに沿った取り締まりがなされる。
Q:ACTAの締結・加盟に関し、議論が分かれるところはあったのか――。
  ・例えば、具体的な記載が抽象化されるなどしている。まずは合意の国際的な枠組み作りが重要視されたので、やむを得ないものと思料する。
Q:水際措置が輸入と輸出の両方向になるが、通過に関してはどうか
  ・適用される。TRIPS協定よりも、明確に輸出入の義務化に加え、任意であるが通過も対象となっている。
Q:ACTAの内容の充実とは具体的には、どのような点か?
  ・ACTAではあくまで抽象的に規定されているにすぎないので、日本等をはじめ先進国の模倣品被害を受けている企業等は、さらに具体的な規定を望む。いかに具体的な形で、どのように知的財産を保護していくのか、ルール化していくのかについて、今後さらに協議が図られていくものと考えられる。ただ、具体的なルール化は、ACTAの枠組み内で整備するのか、その他の経済的な協力の合意の枠組みの中で対応するのか等、様々な方法がある。


4.閉会の挨拶(鈴木一永 広報センター 副センター長)


 
 
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