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事業計画

平成23年度事業計画

【基本方針】

1.魅力的な知的財産制度を構築する。

2.国民のための弁理士制度にする。

3.委員会と附属機関は、街に出る。

4.特許事務所の基盤整備を支援する。

5.会務運営を革新し、会員サービスの向上を図る。

【現状認識】
知的財産制度について
 2003年にスタートした知財立国の国策の下、プロパテント政策の流れに沿って知的財産推進計画が推進され、この梃入れの結果もあって、41万件(2003年)まで減少していた特許出願数も43万件弱まで一旦回復した(2005年)。しかし、2006年以降再び特許出願数が減少し始め、昨年も35万件(2009年)よりさらに減少したものと考えられる。
 このような現実の裏には、日本の生産人口の減少といったこともあるが、同時にユーザーの知財制度への不信感もあると考える。すなわち、近年のように権利行使の際に権利が無効になる可能性が高いと、特許の取得に多大な労力と費用をかけても、特許を活用できず、投資に見合った利益の回収が困難になる。ユーザーは必要最低限或いはそれ以下の保護しか求めなくなっているのが実情である。
 我々弁理士と弁理士制度は、知財制度を礎に成り立っており、知財制度の信頼性を向上させなければならない。現在、特許出願等の出願件数の減少のほかにも、弁理士試験合格者の増員、弁理士報酬の減少といった諸問題が我々弁理士を取り巻いているが、各問題に対して小手先の施策を講じても根本的な解決はない。
 したがって、原点に立ち返って知財制度を抜本的に見直し、ユーザーにとって魅力ある知財制度の実現のために、知的財産権の価値の向上を目指し、ユーザーが信頼感をもって、知的財産の活用が促進される制度になるよう、現場の実務家の立場から種々の提案活動を行い実現する。

弁理士制度について
 また、弁理士制度の本質と弁理士試験制度をもう一度、根本から見直さなければならない。近年、弁理士制度は改善されてきた。付記弁理士制度や標榜業務の拡大など、改善点は多い。しかし、その過程で見失われたものもあるのではないか。弁理士という代理人の制度が定められ、国家資格が付与された上で、特許庁に対する手続において代理人として専権が与えられている意味を考えるべきである。
 特許権などの産業財産権は、行政処分を経て、国家により権利主体に付与される。我々弁理士は、この財産権の形成に関与している。そして、他方、産業財産権は排他権である。第三者の行為を制限するという側面をもっている。つまり、権利主体に対しては財産権という根源的な権利の取得を手伝い、その一方では、第三者に対しても、不当な権利行使が行われないようにする責務がある。
 その結果、高度な専門性と高い倫理観が継続的に求められるものであるからこそ、試験制度があり、専権がある。このことは、一定の知識があることを認定する資格や試験とは本質的に異なる。
 この視点から見ると、現在の弁理士試験合格者数、試験制度上の多くの免除や受験者に有利な決まりが、このような弁理士の本質である、国民のために産業財産制度の公正な運用に資するということに照らして妥当なものでないことは明らかであろう。
 本年度は次のような事業計画に沿って日本弁理士会の運営を行いたい。

【具体的事業】

1.魅力的な知的財産制度を構築する。
日本弁理士会の委員会活動を政策提言できるかたちにする。

(ア)特許、意匠、商標の専門委員会を改組して第1委員会と第2委員会にわける。第1委員会と第2委員会は互いに協力して運営するものであるが、第1委員会は、政策提言と対外的な折衝を担当するものとし、知財経験が10年以上ある者を委員とする。一方、第2委員会は、審査基準や判例などの研究と啓蒙活動を担当する。

(イ)その他の専門委員会(著作権、不正競争防止法、バイオ・ライフサイエンス、ソフトウエア、農林水産知財対応など)は、外形的な改組は行わないが、委員会内で、副委員長または部会長が中心となったワーキンググループを作っていただき、政策的な提言を行っていただく。

(ウ)日本の技術開発力と特許出願の件数の関連性を検討し、必要な出願が行われるような施策をとる。中小企業に対しては、日本弁理士会として、発明創出を手伝い、出願のための補助を行う。地域知財支援を継続して行う。

(エ)商標と意匠の権利保護の有効性と、ブランド戦略の重要性を再確認するためのキャンペーンを行い、弁理士に何ができるのか、なぜ弁理士に依頼すべきなのかを世に訴える。

(オ)また、予定される意匠法の改正の準備が本格的に始まる前に提言を行い、特許法などの法改正にも的確に対応する。

(カ)プロイノベーション政策を提言するワーキンググループを専門委員会の委員長クラスを集めて作る。

(キ)アミカスブリーフ委員会を新たに設けて、裁判所に向けた提言を行えるようにする。

(ク)調査室(「会長室」と改称予定)に渉外担当を置いて、官庁あるいは他の士業団体との折衝においての交渉の補佐と記録の作成に当たってもらう。

2.国民のための弁理士制度にする。
(ア)弁理士法改正委員会として、弁理士試験とその他の弁理士制度に関する問題について統一的に意見を出してもらい、その答申を早急に得て、ロビー活動を本年度中に開始する。弁理士試験の合格者の目標は250名/年程度とし、定性的な弁理士制度のあるべき姿を明確にするとともに、適正な合格者数など定量的な弁理士制度のあり方を検証する。

(イ)上述の答申の結果などの検討事項を踏まえて、平成24年度当初には、日本弁理士会の総会において決議を採択する。

(ウ)会長の私的諮問委員会を立ち上げる。この委員会には、その時々に求められる方々に入っていただき、自由な発言をして頂いて、弁理士制度のあり方を探りたい。

3.委員会と附属機関は、街に出る。
(ア)ビジネスへの挑戦 − 日本弁理士会の附属機関と委員会はこれまで多大の研究成果を達成してきたが、本年度はそれを踏まえて、現実のビジネスにおいて弁理士がどのような参入と収益のチャンスを得られるのかを考えたい。つまり、判例や実務上の課題を整理して検討することやマニュアルの作成も重要ですが、それらの努力を踏まえて、どういったビジネスに弁理士が現実に取り組んでいくべきかを各委員会にも考えて頂きたい。もちろんそういった方向性とは無関係の委員会(例えば、選挙管理委員会)はあるが、それ以外の附属機関や委員会においては、全てビジネス面での検討と、可能であれば実践をお願いしたい。

(イ)外部団体との連携の強化 − 知財協、経団連、日弁連とは、役員会が主導で連携を強化したい。すなわち、テーマを決めて、定期的に会合を持てるようにしたい。その他の、製薬協とバイオ・インダストリー協会は、バイオ・ライフサイエンス委員会に、JEITAとSOFTICはソフトウエア委員会と技術標準委員会に、JASRACは、著作権委員会に、JETRO、JICA、WIPOは、国際活動センターに、経産省の出先機関は知的財産支援センターに、知的財産戦略本部は、役員会と担当ワーキンググループに、文化庁は、著作権委員会に、農水省は、農水知財対応委員会に、財務省は、産業競争力委員会に、それぞれ担当して頂く。知財学会には全会的に対応する。UNITTの活動をサポートする。

(ウ)JETRO、JICAなどの政府系機関へ弁理士が常勤または非常勤の職員やアドバイザーとして参加するためのすじ道をつける。

4.特許事務所の基盤整備を支援する。
(ア)会員サポートセンターを創設する。サポートセンター設立ワーキンググループを作り、提案の骨格を作る。基本的に複数の案を考えて、その中から、可能な組織形態を探る。

(イ)業務の標準化をさらに進めて、事務所内における事務処理の効率を向上させる方策を検討し、モデルケースを作成する。

(ウ)商標の業務強化をはかる。商標委員会にお願いして、出願件数を増大させるには何が必要なのか、どのような政策が望ましいのかを検討する。そして、ブランド戦略の重要性を研究してその結果を訴える(ブランドWG)。

(エ)意匠の業務強化をはかる。平成22年度の「意匠の底力」キャンペーンの成果などを梃子にして、出願件数の増大策を探る。

(オ)周辺業務と著作権については、知財経営コンサルティング委員会や著作権委員会と、研修所(IPBA)との連携を図って、一定のコース修了者に公的支援による場(相談受付、業務開拓)を提供する。

(カ)中小企業・ベンチャー支援については、特許庁の施策動向を詳細に見て、日本弁理士会として何ができるのかを総合政策企画運営委員会にお願いして検討する。

(キ)研修活動を強化する。
 @ これより多くの研修を有料化する。受益者負担の原則から、研修所、支部の別なく、座学の研修については、ある低額の料金を徴収する。
 A 新人養成研修を強化する。事務所の所長に対して、宣伝を行う。
 B 特許英語・外国実務の研修を強化する。
 C 研修所内にプロジェクトチームを作って、研修所の科目を定期的に見直し、例えば20%の科目または講師は毎年入れ替えることにするなど、積極的に研修内容を見直す。
 D 事務所所員のための研修を強化する。海外実務などを研修の対象とする。宣伝を所長をターゲットにして行う。
 E 海外でのインターンのポジションを探して、国際活動センターが紹介できないか検討する。
 F 大学の提携講座を早稲田大学を対象に継続する。

5.会務運営を革新し、会員サービスの向上を図る。
(ア)会員が親しみやすくなるよう日本弁理士会の事務局に受付を作る。

(イ)研修と地域知財の活動のあり方を見直すために、知的財産支援センター、研修所、関東、東海、近畿の各支部の代表からなる地域知財検討ワーキンググループを新設して、それぞれの活動を最適化し、前記3支部以外の支部への支援を強化する。

(ウ)会務への参加促進の方策を、総合政策企画運営委員会にお願いして探ってもらう。ポイント制を利用したマイレージサービス的なことを考える。

(エ)1年間の期間を区切って会費を20%から25%下げることにより、日本弁理士会の経費を見直す。長期的には、会費を下げる方向に持って行く。

(オ)外部プロジェクトを調べて、平成22年度にできた「サポートセンター」担当の事務局員を中心に、そのようなプロジェクトへの参加の方策を探る。

(カ)活動の活性化と若手の参加を促すため、役員と委員会の回数制限を規則に盛り込む。

(キ)総会委任状による議決権数の確保の負担を軽減するための提案を総合政策企画運営委員会にお願いする。

(ク)委員会等におけるコピーと会員に対する月々の送付物の量を電子媒体の活用などにより削減する。あわせて、委員会の運営を効率化する。

(ケ)新たな会員総合データベースを作る。

(コ)共済制度残金が3億円程度あるが、総合政策企画運営委員会にお願いして、共済制度の復活の可能性を検討してもらい、必要であれば、残金の処分を適正に行ってもらう。

(サ)調査室を改組して会長室とし、規則を現状に即したものに直す。

(シ)企業内会員を中心とする委員会を作り、日本弁理士会が企業内会員のために何ができるのかを検討してもらう。

以上

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