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不正競争防止法における弁理士の業務

(1)始めに

 弁理士法は、平成12年に全面改正され(平成12年法律第49号)、不正競争防止法に関して、以下の業務(「特定不正競争」といいます。)を扱うことができるようになっています。

 また、特定侵害訴訟代理業務試験に合格して弁理士登録原簿に付記を受けた弁理士は弁護士と共同で特定侵害訴訟代理業務も行うことができます(弁理士法第6条の2)。特定侵害訴訟には「特定不正競争」による営業上の利益侵害に係る訴訟も含まれます(弁理士法第2条第5項)。

 以下、弁理士が取り扱うことのできる「特定不正競争」を示しますので、この分野における弁理士の活用の一助にしていただければ幸いです。

(2)特定不正競争一覧

 不正競争防止法は、第2条第1項において、以下の行為を「不正競争」として規定しています。これら不正競争行為のうち、弁理士が取り扱うことのできる「特定不正競争」は右欄に○印を付したものです。

 なお、不正競争防止法の各条文における括弧書及び定義規定は脚注で示します。

  条文 特定不正競争

周知表示混同惹起行為 他人の商品等表示1として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

著名表示冒用行為 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

形態模倣行為 他人の商品2の形態3を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為

営業秘密 不正取得・使用・開示行為 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密4を取得する行為5又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為6 ○(技術上の秘密関連に限る7

営業秘密 不正取得後、悪意転得・使用・開示行為 その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為 ○(技術上の秘密関連に限る)

営業秘密 不正取得善意転得後、悪意使用・開示行為 その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為 ○(技術上の秘密関連に限る)

営業秘密 不正目的使用・開示行為 営業秘密を保有する事業者8からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為 ○(技術上の秘密関連に限る)

営業秘密 不正開示後、悪意転得・使用・開示行為 その営業秘密について不正開示行為であること若しくはその営業秘密について不正開示行為9が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為 ○(技術上の秘密関連に限る)

営業秘密 不正開示善意転得後、悪意使用・開示行為 その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為 ○(技術上の秘密関連に限る)

デジタルコンテンツの技術的制限手段を妨げる装置等の譲渡等 営業上用いられている技術的制限手段10により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置11若しくは当該機能のみを有するプログラム12を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為 ×


デジタルコンテンツの技術的制限手段を妨げる装置等の特定の者以外への譲渡等 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置13若しくは当該機能のみを有するプログラム14を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為 ×


ドメイン名の不正取得・保有・使用行為 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示15と同一若しくは類似のドメイン名16を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為


誤認惹起行為 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為 ○(商標関連に限る)


信用毀損行為 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為 ○(特・実・意・商・回路・技術上の秘密関連に限る)


代理人等による商標に関する権利の無断使用等 パリ条約17の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利18を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

1人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。

2最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。

3当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。

4「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう(不正競争防止法第2条第4項)。

5以下「不正取得行為」という。

6秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。

7弁理士法は「特定不正競争」を定義している(弁理士法第2条第4項)。このうち、技術上の秘密とは、秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られていないものをいう(弁理士法第2条第4項括弧書及び不正競争防止法第5条第1項)。

8以下「保有者」という。

9前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。

10他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。

11当該装置を組み込んだ機器を含む。

12当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。

13当該装置を組み込んだ機器を含む。

14当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。

15人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。

16「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう(不正競争防止法第2条第7項)。

17商標法(昭和34年法律第127号)第4条第1項第2号に規定するパリ条約をいう。

18商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。

(3)特定不正競争関連業務

上記特定不正競争に関し、弁理士は以下の業務を行うことができます。

(1)裁判外紛争解決手続についての代理  弁理士は、他人の求めに応じ、特定不正競争に関する裁判外紛争解決手続について、経済産業大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理をすることができます(弁理士法第4条第2項第2号)。
 裁判外紛争解決手続は、「これらの事件の裁判外紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として経済産業大臣が指定するものが行うものについての代理」(弁理士法第4条第2項第2号括弧書)に限られている。この規定を受け、経済産業大臣は「日本知的財産仲裁センター」及び「(社)日本商事仲裁協会」を指定しています(平成13年2月22日経済産業省告示第108号及び第109号)。WIPO等の海外の仲裁機関については、代理人資格の制限がないため、当然に我が国の弁理士が代理人になり得ると解されています(「条解弁理士法」)。
 したがって、弁理士は、これら「日本知的財産仲裁センター」、「(社)日本商事仲裁協会」及び海外の仲裁機関において、特定不正競争に関する裁判外紛争解決手続についての代理を行うことを業とすることができます。
 JPNIC((社)日本ネットワークインフォメーションセンター)等の民間団体内の自主解決手続自体は、そもそも法律上の争訟ではないため、弁理士が単独で申立代理が可能であると解されています(「条解弁理士法」)。

(2)裁判所での補佐  弁理士法は、民事訴訟法第60条の特例として、「弁理士は、…特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。」(弁理士法第5条第1項)と規定しています。
 したがって、弁理士は、弁理士法の規定により、裁判所の許可なく、補佐人になることができます。
 また、弁理士は、民事訴訟法上の「陳述」とは区別されている「尋問」も行うことができます(弁理士法第5条第2項、「条解弁理士法」)。なお、「陳述」とは、法律効果又は事実の存否についての知識を表白する行為のことであり、宣誓した者が虚偽の陳述をしたときは過料が課されます(「条解弁理士法」、民事訴訟法第209条)。これに対し、「尋問」とは、裁判所又は当事者が証人又は反対当事者に対し、質問を発し、強制的に返答させることであり、尋問に対し、正当な理由なく陳述を拒んだときは真実擬制等の制裁があります(「条解弁理士法」、民事訴訟法第208条、第200条、第192条等)。

(3)技術上の秘密の契約の締結等  弁理士法は、「弁理士は、…弁理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、…技術上の秘密の売買契約、…その他の契約の締結の代理若しくは媒介を行い、又はこれらに関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。」(弁理士法第4条第3項)と規定しています。
 上記「特定不正競争」に「技術上の秘密」が関係する場合、その技術上の秘密に関連する契約の代理、媒介、相談が可能です。

(4)付記弁理士の特定侵害訴訟の代理  弁理士法は、「『特定侵害訴訟』とは、…特定不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟をいう。」(弁理士法第2条第5項)と規定しています。
 付記弁理士は、特定侵害訴訟に関して、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、その訴訟代理人となることができます(弁理士法第6条の2第1項)。